エレファント・ビジュアライザー調査記録

ビジュアルプログラミングで数式の変形を表すことを考えていくブロクです。

対称式の基本定理

[定理]

対称式は基本対称式の多項式となります。これを3変数( x,y,z)の場合について証明します。この場合基本対称式は  x+y+z, xy+yz+zx, xyz となります。

[証明]

 f(x,y,z) を対称式とします。 f(x,y,z) kx^{a}y^{b}z^{c} という形の式の和の形で書くことができます。 この kx^{a}y^{b}z^{c} という形の式を単項式といいます。  f(x,y,z)の中に(和の成分として)含まれている単項式を項ということにします。


 f(x,y,z)の中に kx^{a}y^{b}z^{c} lx^{a}y^{b}z^{c}という項があるとすると、これらの項をまとめて (k+l)x^{a}y^{b}z^{c}とすることができます。 よって f(x,y,z)に含まれる項 kx^{a}y^{b}z^{c} a b cのどれかが異なるようにすることができます。 多項式 f(x,y,z)をこの形に書き直したときの f(x,y,z)に含まれる項全体の集合を T(f(x,y,z))とします。


 \sigma を集合 \{x,y,z\}の置換(集合 \{x,y,z\}からそれ自身への全単射)とすると、 単項式 kx^{a}y^{b}z^{c}に単項式 k\sigma (x)^{a}\sigma (y)^{b}\sigma (z)^{c}を対応させる写像を定義することができます。 この(単項式全体の集合からそれ自身への)写像 \sigma と書くことにします。このような写像 x,y,z の置換ということにします。


 T(f(x,y,z))の元 kx^{a}y^{b}z^{c}をとります。  \sigma  x,y,z の置換とすると、 f(x,y,z) は対称式なので  \sigma (kx^{a}y^{b}z^{c}) T(f(x,y,z))の元となります。  kx^{a}y^{b}z^{c}に対して、 x,y,z のすべての置換 \sigma によってできる \sigma (kx^{a}y^{b}z^{c})(の中の異なるもの)全体の集合を S(kx^{a}y^{b}z^{c})とすると、  S(kx^{a}y^{b}z^{c}) T(f(x,y,z))に含まれます。


単項式全体の集合に以下のように順序 \ge を定義します。 単項式 kx^{a}y^{b}z^{c} lx^{a'}y^{b'}z^{c'}は、 a>a'、または a=a'かつ b>b'、または a=a'かつ b=b'かつ c \ge c'であるときに kx^{a}y^{b}z^{c} \ge lx^{a'}y^{b'}z^{c'}であるとします。 この順序 \ge は全順序となります。  a>a'、または a=a'かつ b>b'、または a=a'かつ b=b'かつ c>c'であるときに kx^{a}y^{b}z^{c}>lx^{a'}y^{b'}z^{c'}と書くことにします。


 T(f(x,y,z))は空ではないとし、順序 \ge に関して最大となる T(f(x,y,z))の元 kx^{a}y^{b}z^{c}をとります。


 \LARGE T(k(x+y+z)^{a-b}(xy+yz+zx)^{b-c}(xyz)^{c})


の中で xの次数が最大の元は


 \LARGE T(kx^{a-b}(xy+zx)^{b-c}(xyz)^{c})


の元となります。この中で yの次数が最大の元は


 \LARGE kx^{a-b}(xy)^{b-c}(xyz)^{c}=kx^{a}y^{b}z^{c}


となります。 よって T(k(x+y+z)^{a-b}(xy+yz+zx)^{b-c}(xyz)^{c}) S(kx^{a}y^{b}z^{c})を含み、


 \LARGE T(k(x+y+z)^{a-b}(xy+yz+zx)^{b-c}(xyz)^{c})-S(kx^{a}y^{b}z^{c})


の中で順序 \ge に関して最大となる元を tとすると kx^{a}y^{b}z^{c}>tとなります。


よって


 \LARGE f_{1}(x,y,z)=f(x,y,z)-k(x+y+z)^{a-b}(xy+yz+zx)^{b-c}(xyz)^{c}


とおくと順序 \ge に関する T(f_{1}(x,y,z))の最大元 t kx^{a}y^{b}z^{c}>tとなります。 ここで、もし f_{1}(x,y,z)が基本対称式の多項式であるとすると、 f(x,y,z)も基本対称式の多項式となります。 よって、 f_{1}(x,y,z)が基本対称式の多項式であることを証明すればよいということになります。


 f(x,y,z)から f_{1}(x,y,z)を作ったのと同じ方法で、 f_{1}(x,y,z)から f_{2}(x,y,z) f_{2}(x,y,z)から f_{3}(x,y,z)、と順に作っていくと、どこかの f_{r}(x,y,z) f_{r}(x,y,z)=0となるか、または順序 \ge に関して最大となる元の xの次数は 0となります。すなわち f_{r}(x,y,z)は定数となるので、基本対称式の多項式となります。 したがって元の f(x,y,z)も基本対称式の多項式となるということがわかります。

[証明終わり]