エレファント・ビジュアライザー調査記録

ビジュアルプログラミングで数式の変形を表すことを考えていくブロクです。

2次方程式のべき根による解法

Optimistic Mathematics のサイトでも2次方程式の解法についてここと同様のこと書いているので、同じ内容をこちらにも書いておきます。

2次方程式のべき根による解法

 K を体とします。  z_0 z_1 を変数とし、  K の元を係数とする多項式全体の集合を  R = K[z_0,z_1] とおき、 R上の多項式  (X - z_0)(X - z_1) を考えます。
 \begin{equation}
a	=	- ( z_0 + z_1 ),
\end{equation}
 \begin{equation}
b	=	z_0z_1
\end{equation}
とおくと、
 \begin{equation}
X^2 + aX + b = (X - z_0)(X - z_1)
\end{equation}
となります。 ここで  z_0 z_1 a b を使って表すことを考えます。
 Z = \{ z_0, z_1 \} と置きます。  Z から  Z への全単射の全体を  S とすると、  S は次の表で定義される2つの元  s_0 s_1 からなる集合となります ( s_0 は恒等写像です)。 この表は、  Z の元  z_i S の元  s_j による像  s_j(z_i) を表しています。

 s_0  s_1
 z_0  z_0  z_1
 z_1  z_1  z_0

 S の元  s_i s_j の合成  s_j \circ s_i を、任意の  Z の元  z に対して、  (s_j \circ s_i)(z) = s_j(s_i( z  )) となるものとすると、  s_j \circ s_i は次の表のようになります。

 s_0  s_1
 s_0  s_0  s_1
 s_1  s_1  s_0

 s S の元とします。  R の元  r は、 r = c_{00} z_{0}^{0}z_{1}^{0} + \cdots + c_{ij} z_{0}^{i}z_{1}^{j} + \cdots という形の有限個の和なので、  s(r) = c_{00} s(z_0)^0s(z_1)^0 + \cdots + c_{ij} s(z_0)^is(z_1)^j + \cdots と定義することによって、 s R から  R への写像と考えることができます。  R から  R への写像  u v に対して、 u + v u - v uv u^n
 (u + v)(r)	=	u(r) + v(r),
 (u - v)(r)	=	u(r) - v(r),
 (uv)(r)	=	u(r)v(r),
 (u^n)(r)	=	u(r)^n
と定義します。

 s_1 \circ s_1 = s_0 なので
 f_1 = s_0 - ( s_1 \circ s_0  )
とおくと、  s_1 \circ f_1 = ( s_1 \circ s_0 ) - s_0 = - f_1 となります。 したがって、
 s_1 \circ f_1^2 = ( s_1 \circ f_1 ) ^2 = ( - f_1 ) ^2 = f_1^2
となります。 よって任意の  S の元  s に対して  s \circ f_1^2 = f_1^2 となります。
 X^2 + aX + b = (X - z_0)(X - z_1) X z_0 を代入して、  z_0^2 + az_0 + b = 0 より
 z_0^2 = - az_0 - b
となります。
 \begin{eqnarray*}
X^2 + aX + b & = & (X - z_0)(X + z_0 + a) + z_0^2 + az_0 + b \\
 & = & (X - z_0)(X + z_0 + a)
\end{eqnarray*}
なので  X + z_0 + a X z_1 を代入して、  z_1 + z_0 + a = 0 より
 z_1 = - z_0 - a
となるので、これらを代入すると、  R の元  r は、 z_1 の次数は0次、 z_0 の次数は1次以下にすることができます。 よって、  r = cz_0 + d ( c d は、 a b多項式) と表すことができます。  S の任意の元  s に対して、 s(r) = r であるとすると、  s_1(r) = r であることから、 cz_0 = cz_1 となります。  c z_0 z_1多項式なので、  c 0 ではないとすると、
 cz_0 z_0 に関する次数 =  c z_0 に関する次数  + 1
 cz_1 z_0 に関する次数 =  c z_0 に関する次数、
となるので、  cz_0 = cz_1 が成り立たなくなります。 よって、 c = 0 となるので、 r a b多項式で表すことができます。
よって任意の  R の元  x に対して  f_1^2(x) a b多項式で表すことができます。 とくに
 \begin{eqnarray*}
  f_1^2(z_0) & = & ( s_0( z_0 ) - s_1(s_0( z_0 )) ) ^2 \\
 & = & ( z_0 - z_1 )^2 \\
 & = & z_0^2 - 2z_0z_1 + z_1^2 \\
 & = & z_0^2 - 2z_0(- z_0 - a) + (- z_0 - a) ^2 \\
 & = & 4z_0^2 + 4z_0a + a^2 \\
 & = & 4(- az_0 - b) + 4z_0a + a^2 \\
 & = & a^2 - 4b
\end{eqnarray*}
となります。

 R の元  x に対して  y^2 = x を満たす  R の元  y が存在するとき、 そのようなものの1つを  x^\frac{1}{2} と書くことにします。 すると、 (-x^\frac{1}{2})^2 = (x^\frac{1}{2})^2 = x となるので、 -x^\frac{1}{2} も上の条件を満たします。  R の元  z z^2 = x を満たすとすると、  z^2 = (x^\frac{1}{2})^2 となるので、  (z - x^\frac{1}{2})(z + x^\frac{1}{2}) = 0 となって、  z = x^\frac{1}{2} または  z = -x^\frac{1}{2} となります。 よって、  f_1(z_0) = (a^2 - 4b)^\frac{1}{2} または  - (a^2 - 4b)^\frac{1}{2} となります。

 p = (a^2 - 4b)^\frac{1}{2} または  - (a^2 - 4b)^\frac{1}{2} とおきます。
 f_0 = s_0 + ( s_1 \circ s_0 )
とおくと、  f_0(z_0) = z_0 + s_1( z_0 ) = z_0 + z_1 = -a、 f_1(z_0) = z_0 - s_1( z_0 ) = p から
 z_0 + s_1( z_0 )	=	- a
 z_0 - s_1( z_0 )	=	p
となり、これより
 z_0	=	(- a + p) / 2
 s_1(z_0)	=	(- a - p) / 2
となって、 z_0 s_1(z_0) は ( x^\frac{1}{2} という記法を使えば)  a b の式で表すことができる ということがわかります。

上に述べた式
 z_0 + s_1( z_0 )	=	- a
 z_0 - s_1( z_0 )	=	p
 s_1 を施すと
 s_1( z_0 ) + z_0	=	- a
 s_1( z_0 ) - z_0	=	s_1(p)
となるので、 s_1(p) = - p であり、  p = (a^2 - 4b)^\frac{1}{2} としたときの  z_0 p = - (a^2 - 4b)^\frac{1}{2} としたときの  s_1(z_0) であり、  p = (a^2 - 4b)^\frac{1}{2} としたときの  s_1(z_0) p = - (a^2 - 4b)^\frac{1}{2} としたときの  z_0 であり、  p = (a^2 - 4b)^\frac{1}{2} としても  p = - (a^2 - 4b)^\frac{1}{2} としても、  z_0 s_1(z_0) のどちらかに  z_0 が得られるということがわかります。