ここでは複素数の説明のためにベクトル空間の説明をします。
ベクトル空間
環上の加群のところでも説明しましたがベクトル空間の定義は以下のようになります。
を体とします。アーベル群
とスカラー乗法
が以下の条件を満たすとき
を
上のベクトル空間と呼びます(
を
と書きます)。
部分空間
上のベクトル空間
の空ではない部分集合
が
の演算とスカラー乗法に関してベクトル空間となるとき
を
の部分空間と呼びます。
上のベクトル空間
の部分集合
と
に対して
と定義します。 と
が
の部分空間のとき
は
の部分空間となります。
上のベクトル空間
の元
に対して
と定義します。 は
の部分空間となります。
線型写像
上のベクトル空間
、
に対して
が
- 任意の
と任意の
に対して
を満たすとき を線型写像と呼びます。
線型写像 に対して
を の像と呼びます。
は
の部分空間となります。
を の核と呼びます。
は
の部分空間となります。
の部分空間
と
に対して
と定義します。 を
とおきます(
は
の冪集合)。
は
の分類になっています。
に演算を
と定義すると は
上のベクトル空間となります。
を
と書きます。
は全射の線型写像となり
となります。
次元
ここでは有限次元の場合のみ説明します。
上のベクトル空間
の有限部分集合
が
- 任意の
に対して
ならば
であるとき は1次独立であると言います。
が1次独立であるとき
の部分集合も1次独立となります。
が1次独立で
であるとき
を
の基底と呼びます。このとき
は
と一意的に表すことができます。
が1次独立であるとき
となります(
)。
、
を
上のベクトル空間、
、
とします。
とおきます。
が1次独立であるとき
は
の基底となります。よって
は
と一意的に表すことができます。よって
を
と定義することができます。 は線型写像となります。
が1次独立ならば
は単射となります。
を
上のベクトル空間、
を
の基底とします。このとき
に対して
は1次独立となります。
として
、
を
の基底とします。
と表すことができて、 のどれかは
となります。
とします(他の場合も議論は同様となります)。
を代入して
となります。 は1次独立となります。よってこの操作を繰り返すことができます。
回繰り返すと
という形に表すことができます。 は1次独立となります。
回繰り返すと
という形に表すことができます。 は1次独立とならなければなりませんが1次独立ではありません。よって
となることはあり得ないということがわかります。
よって に有限個の基底があるとき、基底の元の個数は一定であるということがわかります。基底の元の個数が
であるとき、
を
の次元と呼びます。
は
次元であると言います。有限個の基底が存在するとき
は有限次元であると言います。有限個の基底が存在しないとき無限次元と言います。無限次元の場合の説明は省略します。