エレファント・ビジュアライザー調査記録

ビジュアルプログラミングで数式の変形を表すことを考えていくブロクです。

群論の計算(19)

体上の多項式環(2)

既約多項式(1)

 K を体とします。 f \in K [X]

  •  f \not \in K
  • 任意の  g, h \in K [X] に対して  f = gh ならば  g \in K または  h \in K

であるとき  K 内で既約であると言います。

 f \in K [X] に対して、 f で生成された(単項生成)イデアル  K [X] f = \{ gf \ | \ g \in K [X] \} を、 (f) と表すことがあります。

 K を体とします。 f \in K [X]  K 内で既約ならば  (f) K [X] の極大イデアルとなります。

[証明]  I K [X] イデアル (f) \subseteq I であるものとします。 K [X] イデアルは単項生成なので  I = (g) となる  g \in K [X] が存在します。 (f) \subseteq (g) となり  f = gh となる  h \in K [X] が存在します。 f は既約なので  g \in K または  h \in K となります。 f \not \in K だから  g \not \in K であるので  h \in K となります。よって  g \in (f) となって  (f) = (g) = I となります。[証明終わり]

したがって  f \in K [X]  K 内で既約ならば  K [X] / (f) は体となります。

 K を体、 f \in K [X] とします。 (f) K [X] の極大イデアルならば、 f K 内で既約となります。

[証明]  g, h \in K [X]  f = gh g \not \in K とします。 (f) = (gh) \subseteq (g) であり  (f) は極大イデアルなので  g \not \in K であることから  (f) = (gh) = (g) となります。よって  g \in (gh) となって  g = ghk となる  k \in K [ X ] が存在します。 K [X] は整域なので  hk \in K、よって  h \in K となります。[証明終わり]

クロネッカーの分解定理

 f = a_n X^n + a_{n-1} X^{n-1} + \cdots + a_1 X + a_0 \in K [X]  K 内で既約とすると  K [X] / (f) は体となります。

 \varphi : K \to K[X]  a \in K a \in K[X] を対応させる写像( a \in K[X] とは  X^0 の項だけの多項式  g=aX^0)、 \psi : K[X] \to K[X]/(f)  g \in K[X] g + (f) \in K[X]/(f) を対応させる写像とすると、 \varphi \psi は環の準同型となります。 \eta = \psi \circ \varphi : K \to K[X]/(f)  a \in K g + (f) \in K[X]/(f) を対応させる写像となって単射の環の準同型となります。これは体から体への写像なので単射の体の準同型となります。

 g \in K [X] に対して  \sigma_{\psi(g)} : K[X] \to K[X]/(f) を、 h = b_m X^m + b_{m-1} X^{m-1} + \cdots + b_1 X + b_0 \in K [X] に対して
 \begin{eqnarray*}
\sigma_{\psi(g)} (h) & = & \eta(b_m) \psi(g)^m + \eta(b_{m-1}) \psi(g)^{m-1} + \cdots + \eta(b_1) \psi(g) + \eta(b_0) \\
 & = & \psi ( \varphi(b_m) g^m + \varphi(b_{m-1}) g^{m-1} + \cdots + \varphi(b_1) g + \varphi(b_0) ) \\
 & = & \psi ( b_m g^m + b_{m-1} g^{m-1} + \cdots + b_1 g + b_0 )
\end{eqnarray*}
と定義します。これを  h(\psi(g)) と書くことにします。
 g = X \in K[X] に対して  \alpha = \psi(g) = \psi(X) とおくと
 \begin{eqnarray*}
f(\alpha) & = & \sigma_{\alpha} (f) \\
 & = & \psi ( a_n X^n + a_{n-1} X^{n-1} + \cdots + a_1 X + a_0 ) \\
 & = & \psi(f) = f + (f) = (f) 
\end{eqnarray*}
となります。 \eta : K \to K' = K[X]/(f) によって  K \subseteq K' と考えると  f(\alpha) = 0 となる  \alpha \in K' が存在します。 K' の中で  q = q(f, X - \alpha) r = r(f, X - \alpha) を作ります。 r \in K' f = (X -\alpha)q + r から  r = f(\alpha) = 0 となって  f = (X -\alpha)q となります。

 f \in K [X]  K 内で既約ではないとすると  f = gh となる  g, h \in K [X] が存在します( g \ne 0, \deg g \le 1, h \ne 0, \deg h \le 1)。これを繰り返すと  f = f_1 f_2 \cdots f_m となる  f_1, f_2, \cdots, f_m \in K [X] が存在します(各  f_i は既約で  f_i \ne 0, \deg f_i \le 1)。 f_1, f_2, \cdots, f_m の中で  \deg f_i \le 2 であるものを(並べ替えて)  f_1, f_2, \cdots, f_n とします。 f = f_1 f_2 \cdots f_n (X - a_1) (X - a_2) \cdots (X - a_l) と表せます。 f' = f_1 f_2 \cdots f_n とおきます。 f_1, f_2, \cdots, f_n の中の1つを  g とします。 g に対して上の議論より  K \subseteq K' となる体  K' \alpha \in K' が存在して  f(\alpha) = 0 g = (X - \alpha)q となります( q = q(g, X-\alpha))。 f' = f_1 f_2 \cdots f_n の中から  g を除いたものを  f'' とおくと  f '= f'' (X - \alpha)q となります。 \deg f' に関する帰納法により  K \subseteq K'' となる体  K'' が存在して  K'' 内で  f = a (X - a_1) (X - a_2) \cdots (X - a_r) となります( a, a_1, a_2, \cdots , a_r \in K'')。両辺の次数を比較すると  r = \deg f となります。