エレファント・コンピューティング調査報告

極限に関する順序を論理プログラミングの手法を使って指定することを目指すブロクです。

群論の計算(25)

対称式の基本定理

 n 個の変数  x_1, x_2, \cdots , x_n に関する  k 次の基本対称式  \sigma_{n,k} を以下のように帰納的に定義します。

  •  \sigma_{n,0} = 1 ( n = 0, 1, 2, \cdots)
  •  \sigma_{n+1,k+1} = \sigma_{n,k+1} + \sigma_{n,k} x_{n+1} ( n = 0, 1, 2, \cdots k = 0, 1, 2, \cdots ,n)

 \begin{array}{lll}
\sigma_{1,1} = x_1 \\
\sigma_{2,1} = x_1 + x_2, & \sigma_{2,2} = x_1 x_2 \\
\sigma_{3,1} = x_1 + x_2 + x_3, & \sigma_{3,2} = x_1 x_2 + x_2 x_3 + x_3 x_1, & \sigma_{3,3} = x_1 x_2 x_3 \\
& \vdots
\end{array}
となります。

 n 変数の対称式全体の集合を  S_n n 変数の基本対称式からなる多項式全体の集合を  T_n とおきます。

 R を整域とします。

 X_n = \{x_1, x_2, \cdots , x_n\} とし( x_1, x_2, \cdots , x_n は異なる元)、 \mathfrak{S}_n X_n の置換全体の集合とします。

 P_n R 上の多項式環  R[x_1, x_2, \cdots , x_n] とします。 P_{n+1} P_n の元を係数として  x_{n+1}不定元とする多項式環  P_n[x_{n+1}] と考えることができ、これによって  P_n \subseteq P_{n+1} となります。

 \mathfrak{S}_n の元は  R 加群の自己同型  \sigma: P_n \to P_n と考えることができます。

 S_n = \{ f \in P_n \ | \ s(f) = f \ (\forall s \in \mathfrak{S}_n) \} とおきます。

 P_n の元  \alpha_1, \alpha_2, \cdots , \alpha_m R を含む  P_n の最小の部分環を  R[\alpha_1, \alpha_2, \cdots , \alpha_m] と書くことにします。 T_n = R[\sigma_{n,1}, \sigma_{n,2}, \cdots , \sigma_{n,n}] とおきます。

 S_{n} = T_{n} となることを証明します。

 S_{n+1} \subseteq S_n[x_{n+1}]

[証明]  f \in S_{n+1} とすると  f = a_0 + a_1 x_{n+1} + \cdots + a_{m} x_{n+1}^{m} a_0, a_1, \cdots , a_m \in P_n と書けます。 s \in \mathfrak{S}_n に対して  s(f) = f となります。 s(f) = s(a_0) + s(a_1) x_{n+1} + \cdots + s(a_{m}) x_{n+1}^{m} となります。 a_i は一意的に決まるので  s(a_i) = a_i となります。よって  S_{n+1} \subseteq S_n[x_{n+1}] となります。[証明終わり]

 T_n[x_{n+1}] \subseteq T_{n+1}[x_{n+1}]

[証明]  \sigma_{n+1,k+1} = \sigma_{n,k+1} + \sigma_{n,k} x_{n+1} ( n = 0, 1, 2, \cdots k = 0, 1, 2, \cdots ,n) より  \sigma_{n,k+1} = \sigma_{n+1,k+1} - \sigma_{n,k} x_{n+1} ( n = 0, 1, 2, \cdots k = 0, 1, 2, \cdots ,n) となります。よって  \sigma_{n,1} = \sigma_{n+1,1} - \sigma_{n,0} x_{n+1} = \sigma_{n+1,1} - x_{n+1} \in T_{n+1}[x_{n+1}] となります。

 \sigma_{n,k} \in T_{n+1}[x_{n+1}] と仮定すると  \sigma_{n,k+1} = \sigma_{n+1,k+1} - \sigma_{n,k} x_{n+1}\in T_{n+1} [x_{n+1}] となります。帰納法により  T_n[x_{n+1}] \subseteq T_{n+1}[x_{n+1}] となります。[証明終わり]

 T_{n}[x_{n}] \subseteq T_{n} + T_{n}x_{n} + \cdots + T_{n}x_{n}^{n-1}

[証明]  \varphi_n = (t - x_1)(t - x_2) \cdots (t - x_n) \in R[x_1, x_2, \cdots , x_n, t] とおきます。 \varphi_n \in R[\sigma_{n,1}, \sigma_{n,2}, \cdots , \sigma_{n,n}, t] = T_n[t] となります。 \psi_n = \varphi_n - t^n \in T_n[t] とおくと  \psi_n t に関する次数は  n-1 以下となります。 \varphi_{n}(x_{n}) = 0 となるので  x_{n}^{n} = \varphi_{n}(x_{n}) - \psi_{n}(x_{n}) = - \psi_{n}(x_{n}) となります。

 f \in T_{n}[x_{n}] とすると  f = a_0 + a_1 x_{n} + \cdots + a_{m} x_{n}^{m} a_0, a_1, \cdots , a_m \in T_{n} と書けます。 m \ge n のとき
 \begin{eqnarray*}
f & = & a_0 + a_1 x_{n} + \cdots + a_{m} x_{n}^{m-n} x_{n}^{n} \\
  & = & a_0 + a_1 x_{n} + \cdots + a_{m} x_{n}^{m-n} (- \psi_{n}(x_{n}))
\end{eqnarray*}
となって  f = b_0 + b_1 x_{n} + \cdots + b_{m} x_{n}^{m-1} という形に書くことができます。これを繰り返すと
 f \in T_{n} + T_{n}x_{n} + \cdots + T_{n}x_{n}^{n-1}
となります。[証明終わり]

 a_0 + a_1 x_{n} + \cdots + a_{n-1} x_{n}^{n-1} = 0 \ \ ( a_0, a_1, \cdots , a_{n-1} \in S_{n} ) \implies a_0 = a_1 = \cdots = a_{n-1} = 0

[証明]  x_1, x_2, \cdots , x_{n-1} x_{n} を入れ替えることにより
 \begin{array}{ccc}
a_0 + a_1 x_{1} + \cdots + a_{n-1} x_{1}^{n-1} & = & 0 \\
a_0 + a_1 x_{2} + \cdots + a_{n-1} x_{2}^{n-1} & = & 0 \\
\vdots & & \\
a_0 + a_1 x_{n} + \cdots + a_{n-1} x_{n}^{n-1} & = & 0
\end{array}
が成り立ちます。

 \displaystyle M= \begin{pmatrix}1&x_{1}&x_{1}^{2}&\cdots &x_{1}^{n-1}\\1&x_{2}&x_{2}^{2}&\cdots &x_{2}^{n-1}\\\vdots &\vdots &\vdots &\ddots &\vdots \\1&x_{n}&x_{n}^{2}&\cdots &x_{n}^{n-1}\end{pmatrix}
という行列  M行列式  \det M をヴァンデルモンドの行列式と呼びます。 \displaystyle \det M=\prod _{1\leq i \lt j\leq n}(x_{j}-x_{i}) となります。 x_1, x_2, \cdots , x_n がすべて異なるとき  \det M \ne 0 となり  P_n の商体で  M逆行列  M^{-1} が存在します。

 \displaystyle {\begin{pmatrix}1&x_{1}&x_{1}^{2}&\cdots &x_{1}^{n-1}\\1&x_{2}&x_{2}^{2}&\cdots &x_{2}^{n-1}\\\vdots &\vdots &\vdots &\ddots &\vdots \\1&x_{n}&x_{n}^{2}&\cdots &x_{n}^{n-1}\end{pmatrix}}{\begin{pmatrix}a_{0}\\a_{1}\\\vdots \\a_{n-1}\end{pmatrix}}={\begin{pmatrix}0\\0\\\vdots \\0\end{pmatrix}}
であるから
 \displaystyle 
{\begin{pmatrix}a_{0}\\a_{1}\\\vdots \\a_{n-1}\end{pmatrix}}
= M^{-1} {\begin{pmatrix}0\\0\\\vdots \\0\end{pmatrix}} 
= {\begin{pmatrix}0\\0\\\vdots \\0\end{pmatrix}}
となって  a_0 = a_1 = \cdots = a_{n-1} = 0 となります。[証明終わり]

 T_{n+1}[x_{n+1}] \cap S_{n+1} \subseteq T_{n+1}

[証明]  f \in T_{n+1}[x_{n+1}] とすると  f = a_0 + a_1 x_{n+1} + \cdots + a_{n} x_{n+1}^{n} a_0, a_1, \cdots , a_n \in T_{n+1} と書けます。

 f \in S_{n+1} とすると  b_0 = f b_1 = b_2 = \cdots = b_n = 0 とおくと  f = b_0 + b_1 x_{n+1} + \cdots + b_{n} x_{n+1}^{n} となり  b_0 = f \in S_{n+1} より  a_i = b_i \ (i = 0, 1, 2, \cdots , n) となります。

よって  f = a_0 \in T_{n+1} となります。[証明終わり]

 S_n = T_n

[証明]  n に関する帰納法で証明します。 S_1 = T_1 は成り立っています。

 S_n = T_n と仮定します。
 S_{n+1} = S_n[x_{n+1}] \cap S_{n+1} = T_n[x_{n+1}] \cap S_{n+1} = T_{n+1}[x_{n+1}] \cap S_{n+1} = T_{n+1}
となって  S_{n+1} = T_{n+1} が成り立ちます。[証明終わり]

よって  n 変数の対称式全体の集合  S_n n 変数の基本対称式からなる多項式全体の集合  T_n は一致することが証明できました。

体上の代数の同型を使うともう少し簡単に証明できるかもしれないのですが、これは今後考えていくことにします。