体と自己同型写像(9)
さらにまた少し定理を書き直していきます。
定理 5.32
を体とします。 を の有限拡大体とします。 を と の任意の中間体とすると
が成り立ちます。
[証明] は 上のベクトル空間となります。その次元を とし、 を基底とします。 となります。 は 上のベクトル空間となります。その次元を とし、 を基底とします。 となります。よって となります。
(、) が を満たすとすると、 となります。
で は の 上の基底なので () となります。 で は の 上の基底なので (、) となります。よって は 上で1次独立となります。
よって は の 上の基底となり、 の 上の次元は となります。[証明終わり]
定理 5.33
を の拡大体、 を 上のある多項式の最小分解体とします。 を と の任意の中間体とします。 とし、 の による固定体を とすると
が成り立ちます。特に、 とすれば
が成り立ちます。
[証明] は 上では恒等写像であるような の自己同型写像なので と考えることができます。 を基準に考えると となります。
とすると となります。
が成り立つので、 とすると となります。
逆に とします。
定理 5.27 より となる が存在します。 は のガロア拡大なので は の 上の最小多項式 の最小分解体となります。 とし、 の根を とおきます。
は の 次以下のある多項式 で と書くことができ、 とすると任意の に対して となります。
となる が存在するとします。 とおくと となります。 は で割り切れて次数が より小さいので となり、 となります。逆に ならば となります。
よって を と定義することができ、 は演算を保存するので を不変にする の同型写像となります。
とおくと となり、 の次数が 以上とすると は 個の異なる根 を持つことになり矛盾となります。
よって の次数は となり、 となって、 が成り立ちます。
最初に述べたように が成り立っていたので となります。[証明終わり]
定理 5.34
を の拡大体、 を 上のある多項式の最小分解体とします。
を と の任意の中間体とします。、 を の部分群とします。 における の固定体を とすると
が成り立ちます。
[証明] とすると となります。
が成り立つので、 とすると となります。
定理 5.27 より となる が存在します。 は のガロア拡大なので は の 上の最小多項式 の最小分解体となります。 とおくと定理 5.31 より となります。
とします()。 とおくと は任意の によって不変なので の係数は任意の によって不変となり の元となります。よって となります。
は の 上の最小多項式なので は で割り切れます。 であるから となります。よって となって となります。[証明終わり]
定理 5.35
を の拡大体、 を 上のある多項式の最小分解体、 をガロア群とします。中間体 と部分群 がガロア対応しているとします。 を の任意の元とするとき
[証明] 1. 以下のことが成り立つことからわかります。
2. 任意の に対して以下のことが成り立ちます。
[証明終わり]
定理 5.36
を の拡大体、 を 上のある多項式の最小分解体とします。そのガロア群を とし、中間体 と部分群 がガロア対応しているとします。このとき
が のガロア拡大である が の正規部分群である
また、これらを満たすとき
[証明] が のガロア拡大であるとします。 を に制限した写像を とすると が のガロア拡大であることから となります。 となって、定理 5.35 (2) より は の正規部分群となります。
逆に が の正規部分群とすると定理 5.35 (2) より任意の に対して となります。
定理 5.27 より となる 、 となる が存在します。 となります。定理 5.21 より 上の代数の同型 を拡張した が存在して、 となります。
よって任意の 上の代数の同型 に対して となるので は のガロア拡大となります。
を と定義します。上に述べたように定理 5.21 より任意の に対して を満たす が存在するので は全射となります。 ( は の恒等写像)となり が成り立ちます。[証明終わり]