根が冪根で表すことができるならばガロア群は可解群
この項は『今度こそわかるガロア理論』*1 も参照しています。
定理 6.4
を の原始 乗根とします。 は を含む体で には が含まれているものとします。 を とし 上の多項式 の根の1つを とします。このとき は巡回群であり、位数は の約数となります。 は巡回拡大となります。
[証明] 、 とおきます。 となるので は の最小分解体となり は のガロア拡大体となります。 とおきます。
任意の に対して となる が一意的に存在するので、 から位数 の巡回群 への写像 を と定義することができて、 は単射となります。
に対して 、 とすると
であるから
となって は準同型となります。したがって は位数 の巡回群 の部分群と同型で巡回群となります。[証明終わり]
定理 6.9
を含む体 のある拡大体の元 が 上で冪根で表されているとき が累巡回拡大かつガロア拡大となる を含む の拡大体 が存在します。
[証明] とおきます。
を から への 上の代数の単射の準同型全体として の和集合 で生成された体、すなわち を含む最小の体を とします。 の元と 上共役な元はすべて に含まれるので は 上ガロア拡大となります。
また のどの体も体 の累冪根拡大体なので も の累冪根拡大体となります。
よって次のような体の列が存在します。
()
、 を の原始 乗根、 とおきます。 はガロア拡大となります。
の任意の元 、 をとると 、 となる (、) が存在します。
が成り立ちます。 と が決まれば と は決まるので はアーベル群となります。
の部分群の列
を であれば をとって を と で生成された の部分群となるようにとります。 は有限群なのでこの列は有限となります。 はアーベル群なので のすべての部分群は の正規部分群となります。 は巡回群となります。 が巡回群(アーベル群としても同値となります)である列を持つとき は可解群であると定義したので は可解群となります。
定理 6.2 より は累巡回拡大となります。
また は 上ガロア拡大であるから と の合成体( と を含む最小の体)を で表すことにすれば も のガロア拡大となります。
合成体 () に対して
となります。 の約数である に対して の原始 乗根 となるから、定理 6.4 より は 上巡回拡大となります()。
よって はガロア拡大であり、累巡回拡大となります。[証明終わり]
定理 6.10
を含む体 上の多項式 の1つの根が冪根で表されるならば のガロア群は可解群となります。
[証明] の1つの根を 、最小分解体を とします。定理 6.9 より体の列
で、 が巡回拡大()、 はガロア拡大で、 であるものが存在します。 はガロア拡大なので の根はすべて に含まれます。よって は の最小分解体を を含みます。 はガロア拡大なので定理 5.31 より もガロア拡大となります。
、 とおきます。定理 5.31 より となります。 が累巡回拡大なので定理 6.2 より は可解群となります。定理 2.30 (可解群の剰余群は可解群)より も可解群となります。[証明終わり]
- 作者:芳沢 光雄
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