エレファント・コンピューティング調査報告

極限に関する順序を論理プログラミングの手法を使って指定することを目指すブロクです。

群論の計算(38)

根が冪根で表すことができるならばガロア群は可解群

この項は『今度こそわかるガロア理論*1 も参照しています。

定理 6.2

 \mathbb{Q} を含む体  Kガロア拡大 Lガロア群を  G とします。
 G が可解群である  \iff  L/K は累巡回拡大である

定理 6.4

 \zeta 1 の原始  n 乗根とします。 K \mathbb{Q} を含む体で  K には  \zeta が含まれているものとします。 a \in K a \ne 1 とし  K 上の多項式  X^n - a の根の1つを  \sqrt[n]{a} \notin K とします。このとき  \operatorname{Gal}(K(\sqrt[n]{a})/K)巡回群であり、位数は  n の約数となります。 K(\sqrt[n]{a})/K は巡回拡大となります。

[証明]  \alpha = \sqrt[n]{a} L = K(\alpha) とおきます。 L = K(\alpha, \alpha \zeta, \alpha \zeta^2, \cdots , \alpha \zeta^{n-1}) となるので  L X^n - a の最小分解体となり  L Kガロア拡大体となります。 G = \operatorname{Gal}(L/K) とおきます。

任意の  \sigma \in G に対して  \sigma(\alpha) = \alpha \zeta^{i} となる  i \in \{ 0,1, 2, \cdots , n-1 \} が一意的に存在するので、 G から位数  n巡回群  \langle \zeta \rangle = \{ \zeta^j \operatorname{|} j = 0, 1, 2, \cdots , n-1 \} への写像  \psi \psi(\sigma) = \zeta^i と定義することができて、 \psi単射となります。

 \sigma , \tau \in G に対して  \psi(\sigma) = \zeta^i \psi(\tau) = \zeta^j とすると
 (\sigma \tau) (\alpha) = \sigma ( \tau (\alpha) ) = \sigma(\alpha \zeta^{j}) = \sigma(\alpha)\zeta^{j} = \alpha \zeta^{i} \zeta^{j} = \alpha \zeta^{i + j}
であるから
 \psi(\sigma\tau) = \zeta^{i + j} = \psi(\sigma) \psi(\tau)
となって  \psi は準同型となります。したがって  G は位数  n巡回群  \langle \zeta \rangle の部分群と同型で巡回群となります。[証明終わり]

定理 6.9

 \mathbb{Q} を含む体  K のある拡大体の元  \alpha K 上で冪根で表されているとき  L/K が累巡回拡大かつガロア拡大となる  \alpha を含む  K の拡大体  L が存在します。

[証明]  M = K(\alpha) とおきます。

 \sigma_1, \sigma_2, \cdots , \sigma_m M から  \mathbb{C} への  K 上の代数の単射の準同型全体として  \sigma_1(M), \sigma_2(M), \cdots , \sigma_m(M) の和集合  S で生成された体、すなわち  S を含む最小の体を  L とします。 S の元と  K 上共役な元はすべて  L に含まれるので  L Kガロア拡大となります。

また  \sigma_1(M), \sigma_2(M), \cdots , \sigma_m(M) のどの体も体  K の累冪根拡大体なので  L K の累冪根拡大体となります。

よって次のような体の列が存在します。
 K = M_0 \varsubsetneq M_1 \varsubsetneq M_2 \varsubsetneq \cdots \varsubsetneq M_r = L
 M_{i+1} = M_i(\sqrt[n_i]{a_i}) \ (a_i \in M_i) ( i = 0, 1, \cdots , r-1)

 \displaystyle n = \prod_{i=0}^{r-1} n_i \zeta 1 の原始  n 乗根、 N = K(\zeta) とおきます。 N/Kガロア拡大となります。

 H = \operatorname{Aut}_K (N) の任意の元  \sigma \tau をとると  \sigma(\zeta) = \zeta^i \tau(\zeta) = \zeta^j となる  i, j ( 1 \le i \le n 1 \le j \le n) が存在します。
 \sigma \tau(\zeta) = \sigma(\zeta^j) = (\sigma(\zeta))^j = (\zeta^i)^j
 = (\zeta^j)^i = (\tau(\zeta))^i = \tau(\zeta^i) = \tau \sigma(\zeta)
が成り立ちます。 \sigma(\zeta) \tau(\zeta) が決まれば  \sigma \tau は決まるので  H はアーベル群となります。

 H の部分群の列
 H_0 = \{e\} \subseteq H_1 \subseteq H_2 \subseteq \cdots \subseteq H_l = H
 H_i \ne H であれば  \mu_1 \in H \setminus H_i をとって  H_{i+1} H_i \mu_i で生成された  H の部分群となるようにとります。 H は有限群なのでこの列は有限となります。 H はアーベル群なので  H のすべての部分群は  H正規部分群となります。 H_{i+1}/H_i巡回群となります。 H_{i+1}/H_i巡回群(アーベル群としても同値となります)である列を持つとき  H は可解群であると定義したので H は可解群となります。

定理 6.2 より  N/K は累巡回拡大となります。

また  L Kガロア拡大であるから  N L の合成体( N L を含む最小の体)を  F = NL で表すことにすれば  F Kガロア拡大となります。

合成体  F_i = NM_i ( i = 0, 1, \cdots , r) に対して
 K \subseteq N = F_0 \subseteq F_1 \subseteq F_2 \subseteq \cdots \subseteq F_r = F
 F_{i+1} = NM_i(\sqrt[n_i]{a_i}) = F_i(\sqrt[n_i]{a_i}) となります。 n の約数である  n_i に対して  1 の原始  n 乗根  \zeta \in K(\zeta) = N \subseteq F_i となるから、定理 6.4 より  F_{i+1} F_i 上巡回拡大となります( i = 0, 1, \cdots , r-1)。

よって  F/Kガロア拡大であり、累巡回拡大となります。[証明終わり]

定理 6.10

 \mathbb{Q} を含む体  K 上の多項式  f の1つの根が冪根で表されるならば  fガロア群は可解群となります。

[証明]  f の1つの根を  \alpha、最小分解体を  L とします。定理 6.9 より体の列
 K = M_0 \subseteq M_1 \subseteq M_2 \subseteq \cdots \subseteq M_{k-1} \subseteq M_k = E
で、 M_{i+1} / M_{i} が巡回拡大( i = 0, 1, \cdots , k-1)、 E/Kガロア拡大で、 \alpha \in E であるものが存在します。 E/Kガロア拡大なので  f の根はすべて  E に含まれます。よって  E f の最小分解体を  L を含みます。 E/Kガロア拡大なので定理 5.31 より  E/Lガロア拡大となります。

 G = \operatorname{Gal}(E/K) H = \operatorname{Gal}(E/L) とおきます。定理 5.31 より  \operatorname{Gal}(L/K) \cong G/H となります。 E/K が累巡回拡大なので定理 6.2 より  G は可解群となります。定理 2.30 (可解群の剰余群は可解群)より  G/H も可解群となります。[証明終わり]

今度こそわかるガロア理論 (今度こそわかるシリーズ)

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*1:今度こそわかるガロア理論, 芳沢 光雄著, 出版社: 講談社, ISBN-10: 4061566024, ISBN-13: 978-4061566026, 発売日: 2018/4/26