エレファント・コンピューティング調査報告

極限に関する順序を論理プログラミングの手法を使って指定することを目指すブロクです。

群論の計算(39)

正規拡大・原始元の存在定理

ここでいったん正規拡大などの議論を考え直してみます。『現代代数学*1、『代数学*2 を参考にしています。復刊版があるようです。

(現代代数学) 定理 30.6

 \chi_1,\chi_2, \cdots , \chi_m半群  S から体  K の乗法群への相異なる準同型とします。このとき  a_1\chi_1+a_2\chi_2 + \cdots + a_n \chi_m = 0 ( a_1, a_2, \cdots , a_m \in K)であるなら  a_1=a_2=\cdots=a_m=0 が成立します。

[証明]  \chi _{1},\chi _{2},\cdots ,\chi _{n} 半群  G から体  K の乗法群への異なる半群の準同型、 a_{1}, a_{2},  \cdots , a_{n} \in K とし  a_{1}\chi _{1}+a_{2}\chi _{2}+\cdots +a_{n}\chi _{n}=0 とします。 f = a_{1}\chi _{1}+a_{2}\chi _{2}+\cdots + a_{n-1} \chi_{n-1} +a_{n}\chi _{n} とおきます。

 n に関する帰納法によります。 n=0 のときは(示すべきことがないので)成り立っています。 n=1 のときは  f = a_{1}\chi _{1} となり  x \in G をとると  0 = f(x)= a_{1}\chi _{1}(x) となり、 \chi _{1}(x) \ne 0 なので  a _{1}(x) \ne 0 となって成り立ちます。

 n \ge 2 とし  n-1 のときは成り立っていると仮定します。任意の  x, y \in G に対して以下のことが成り立ちます。

 f(x) = 0 より
 f(x) = a_1 \chi_1(x) + a_2 \chi_2(x) + \cdots + a_{n-1} \chi_{n-1}(x) + a_{n} \chi_{n}(x) = 0

 f(yx) = 0 より
 f(yx) =  a_1 \chi_1(yx) + a_2 \chi_2(yx) + \cdots + a_{n-1} \chi_{n-1}(yx) + a_{n} \chi_{n}(yx) = 0
 a_1 \chi_1(y) \chi_1(x) + a_2 \chi_2(y) \chi_2(x) + \cdots + a_{n-1} \chi_{n-1}(y) \chi_{n-1}(x) + a_{n} \chi_{n}(y) \chi_{n}(x) = 0

 \chi_{n}(y) f(x) = 0 より
 \chi_{n}(y) f(x) =
 a_1 \chi_{n}(y) \chi_1(x) + a_2 \chi_{n}(y) \chi_2(x) + \cdots + a_{n-1} \chi_{n}(y) \chi_{n-1}(x) + a_{n} \chi_{n}(y) \chi_{n}(x) = 0

 \chi_{n}(y) f(x) - f(yx) = 0 より
 a_1 (\chi_{n}(y) - \chi_1(y) ) \chi_1(x) + \cdots + a_{n-1} ( \chi_{n}(y) - \chi_{n-1}(y) ) \chi_{n-1}(x) = 0

これは任意の  x \in G に対して成り立っているので
 a_1 (\chi_{n}(y) - \chi_1(y) ) \chi_1 + \cdots + a_{n-1} ( \chi_{n}(y) - \chi_{n-1}(y) ) \chi_{n-1} = 0
が成り立ちます。

帰納法の仮定より  n-1 のときは成り立っているので任意の  y \in G に対して
 a_1 (\chi_{n}(y) - \chi_1(y) ) = \cdots = a_{n-1} ( \chi_{n}(y) - \chi_{n-1}(y) ) \chi_{n-1} = 0
となります。

 \chi_{n} \chi_{i} ( i \ne n) は異なる指標なので  \chi_{n}(y_i) \ne \chi_{i}(y_i) となる  y_i \in G が存在します。 a_i (\chi_{n}(y_i) - \chi_i(y_i) ) = 0 なので  a_i = 0 となります。これはすべての  i に対して成り立つので  a_1 = a_2 = \cdots = a_{n-1} = 0 となります。

 f = a_{n}\chi _{n} となって  n = 1 のときの議論により  a_n = 0 となります。[証明終わり]

系 30.7

 \sigma_1,\sigma_2, \cdots , \sigma_m を体  L から体  L' への相異なる同型とします。このとき  a_1\sigma_1+a_2\sigma_2 + \cdots + a_n \sigma_m = 0 ( a_1, a_2, \cdots , a_m \in L')であるなら  a_1=a_2=\cdots=a_m=0 が成立します。

命題 30.8

 L/K n 次の拡大、 M K の拡大体とします。このとき  \psi: K \to M を拡張する同型  \sigma: L \to M の個数は  n 以下となります。

[証明]  n+1 個の拡張  \sigma_1, \cdots , \sigma_{n+1} があるとします。 L K 上の基底  \xi_1, \cdots , \xi_n について連立一次方程式
 \sigma_1(\xi_i) X_1 + \cdots + \sigma_{n+1}(\xi_i) X_{n+1} = 0 ( i = 1, \cdots , n)
は変数の個数が方程式の個数より大きいから
 \sigma_1(\xi_i) \beta_1 + \cdots + \sigma_{n+1}(\xi_i) \beta_{n+1} = 0 ( i = 1, \cdots , n)
を満たす解  (\beta_1, \cdots , \beta_{n+1} ) \ne (0, \cdots , 0) が存在します。 L の任意の元  \alpha \sum a_i \xi_i ( a_i \in K) の形に表され、 \displaystyle \sigma_j (\alpha) = \sum_{i=1}^{n} \psi(a_i) \sigma_j (\xi_i) だから
 \displaystyle \sigma_1(\alpha) \beta_1 + \cdots + \sigma_{n+1}(\alpha) \beta_{n+1}
  = \sum_{i=1}^{n} \psi(a_i) \sum_{j=1}^{n+1} \sigma_j (\xi_i) \beta_j = 0 ( i = 1, \cdots , n)
となって系 30.7 に矛盾となります。[証明終わり]

定義(正規拡大)

体の代数拡大  L/K は、以下の同値な条件を満たすとき正規拡大と呼びます。 \bar{K} K L を含む代数的閉包とします。

  •  K 上恒等写像であるような  L \bar{K} へのすべての埋め込み は  \sigma(L) = L を満たす。言い換えると、 \sigma L K-同型である。
  •  L に根をもつような  K[X] のすべての既約多項式 L に根をすべてもつ。すなわち、 L[X] において一次式に分解する。

定理 30.9

 G を体  L の自己同型のつくる有限群、その位数を  n とし、 K = \{ a \in L \ | \ \sigma(a) = a \ (\forall \sigma \in G) \} とおきます。このとき  K L の部分体となって、 L/K n 次の正規拡大であり、 G L K-自己同型の全体となります。

[証明]  K L の部分体となることは明らか。

 G の元を  \sigma_1 = 1, \cdots , \sigma_n とします。これらは  n 個の相異なる  K-自己同型  L \to L となるので命題 30.8 により  [L:K] \ge n となります。

 [L:K] > n として  L の元  \xi_1, \cdots , \xi_{n+1} K 上1次独立であるとします。命題 30.8 の証明と同様の論法で
 \sigma_j(\xi_1) \alpha_1 + \cdots + \sigma_j(\xi_{n+1}) \alpha_{n+1} = 0 ( j = 1, \cdots , n)
を満たす解  (\alpha_1, \cdots , \alpha_{n+1} ) \ne (0, \cdots , 0) が存在します。

このような解のうち  \alpha_i \ne 0 である  i の数  r が最小のものを、番号をつけ直して
(*)  \sigma_j(\xi_1) \alpha_1 + \cdots + \sigma_j(\xi_{r}) \alpha_{r} = 0 ( j = 1, \cdots , n)
であるとします。 r \ge 2 となります。 \alpha_r^{-1} をかけて最後の  \alpha_r 1 にすることができます。

 \sigma_1 = 1 \xi_1, \cdots, \xi_r K 上1次独立だから  \alpha_i がすべて  K に属することはありません。 \alpha_1 \not \in K とします。そのとき  K の定義から  \sigma_k(\alpha_1) \ne \alpha_1 となる  \sigma_k が存在します。

(*) に  \sigma_k を作用させると
 (\sigma_k \sigma_j)(\xi_1) \sigma_k(\alpha_1) + \cdots + (\sigma_k \sigma_j)(\xi_{r}) \sigma_k(\alpha_{r}) = 0 ( j = 1, \cdots , n)
となります。

一方 (*) は任意の  \sigma_j で成り立つから、とくに  \sigma_k \sigma_j を入れれば
 (\sigma_k \sigma_j)(\xi_1) \alpha_1 + \cdots + (\sigma_k \sigma_j)(\xi_{r}) \alpha_{r} = 0 ( j = 1, \cdots , n)
となります。

この2式の差をつくれば  \alpha_r  = 1 により
 (\sigma_k \sigma_j)(\xi_1) (\sigma_k(\alpha_1) - \alpha_1) + \cdots + (\sigma_k \sigma_j)(\xi_{r-1}) (\sigma_k(\alpha_{r-1}) - \alpha_{r-1}) = 0 ( j = 1, \cdots , n)
となります。

 \sigma_k\sigma_j の全体 ( j = 1, \cdots , n) は  G に一致し、 \alpha_1^{\sigma_k} - \alpha_1 \ne 0 であるから、これははじめの解 { \alpha_i} よりも短い解を与えることになり、矛盾となります。よって  [L:K] = n となります。

命題 30.8 により、  L から  \bar{K} への  K-同型の個数は高々  n 個でなければならず、 G がすでに  n 個を与えているから、  G がその全体となります。すると命題30.2 の b) (正規拡大の同値条件)により、  L/K は正規拡大となります。[証明終わり]

定理 31.16

有限次分離拡大は単純拡大となります。

[証明] 基礎体  K が有限体の場合は有限体の構造論からわかります。

 K が無限個の元を持つとします。 K に2元を添加した場合が単純拡大であることを示せば、一般の場合は帰納法によって示すことができます。

 L = (\alpha, \beta) K の分離拡大とします。 \sigma_1, \cdots , \sigma_n K-同型  L \to \bar{K} の全体とします。 n = [L:K] となります。

もし  \sigma_i(\alpha) - \sigma_j(\alpha) = 0 かつ  \sigma_i(\beta) - \sigma_j(\beta) = 0 とすれば  \sigma_i \sigma_j \alpha \beta に対して同じ作用となり、従って  L 全体で一致します。 K は無限個の元を持つので  c(\sigma_i(\alpha) - \sigma_j(\alpha) \ne \sigma_i(\beta) - \sigma_j(\beta) ( i \ne j, \ \  i, j = 1, \cdots , n) を満たす  c \in K が存在します。

そのとき  \gamma = c \alpha - \beta とおけば  \sigma_i \ne \sigma_j のとき  \sigma_i(\gamma) \ne \sigma_j(\gamma)
これは  \gamma が少なくとも  n 個の共役元をもつことを示し、 [K(r):K] \ge n となります。よって  L = K(\gamma) となります。[証明終わり]

定義(基本対称式)

多項式
 f = (X-x_1) \cdots (X-x_n) = X^n - s_1X^{n-1} + \cdots + (-1)^ns_n
の係数  s_i を第  i 基本対称式と呼びます。

命題 33.10

任意の対称式は基本対称式の有理式として表さます。有理式体  K(x_1, \cdots , x_n) は対称式体のガロア拡大で、そのガロア群は  S_n となります。

[証明]  n 変数有理式体  K(x_1, ..., x_n) に対称群  S_n f^\sigma(x_1, \cdots, x_n) = f(x_{\sigma(1)}, \cdots , x_{\sigma(n)}) によって作用させれば、自己同型群をなし、その不変体  F(S_n) が対称式全体のつくる部分体となります。

 K(x_1, \cdots , x_n) は体  K(s_1, \cdots , s_n) における分離的多項式
 f = (X-x_1) \cdots (X-x_n) = X^n - s_1X^{n-1} + \cdots + (-1)^ns_n
の最小分解体なので  K(x_1, \cdots , x_n)/K(s_1, \cdots , s_n)ガロア拡大であり、そのガロア群は  \{x_1, \cdots , x_n\} の置換からなるが、 F(S_n) \supseteq K(s_1, \cdots , s_n) だからガロア群は  S_n F(S_n) = K(s_1, \cdots , s_n) となります。[証明終わり]

(代数学) 例題 29.3

代数拡大  L/K が単純拡大であることと  L/K の中間体の個数が有限であることは同値となります。

[証明]  L=K(\alpha ) f \alpha K 上の最小多項式とします。 M を中間体とします。 L=M(\alpha ) g \alpha M 上の最小多項式とします。

 g f の因子となります。 g = X^m + a_1 X^{m-1} + \cdots + a_m ( a_i \in M)とし  M' = K(a_1, a_2, \cdots , a_m) とおくと  M' \subseteq M となります。 g \alpha M 上の最小多項式となります。 [L : M'] = [L : M] となるので  M' = M となります。よって中間体  M の個数は  f の因子で最高次係数  1 のものの個数以下であり、有限となります。

逆に中間体の個数を有限とすると、 L K から有限回の添加によって得られるから  [L : K] < \infty となります。

よって  K が有限体ならば  L も有限体であり、有限体の性質から  L/K が単純拡大であることがわかります。

 K が無限体の場合  \alpha ,  \beta L の任意の元とすると、体  K(\alpha + c \beta) ( c \in K) のうち相異なるものは有限個であるから、ある  c_1 \ne c_2 について  K(\alpha + c_1 \beta) = K(\alpha + c_2 \beta) が成り立ちます。

この体は  (c_1 - c_2) \beta を含んでいます。従って  \beta を含み、さらに  \alpha = ( \alpha + c_1 \beta ) - c_1 \beta も含みます。よって  K(\alpha , \beta) = K(\alpha + c_1 \beta) となります。

 L K に有限個の元を添加して得られるのであるから、帰納法により  L K の単純拡大となることがわかります。[証明終わり]

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代数学(新数学講座) (朝倉復刊セレクション)

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