エレファント・ビジュアライザー調査記録

ビジュアルプログラミングで数式の変形を表すことを考えていくブロクです。

エレファントな整数論(8)

剰余類

 a, b \in \mathbb{Z} に対して

  •  a \mathbb{Z} = \{ an \mid n \in \mathbb{Z} \}
  •  b + a \mathbb{Z} = \{ b + an \mid n \in \mathbb{Z} \}

と定義します。

 a \in \mathbb{Z} に対して

  •  \mathbb{Z} / a \mathbb{Z} = \{ b + a \mathbb{Z} \mid b \in \mathbb{Z} \}

と定義します。 \mathbb{Z} / a \mathbb{Z} に演算  + b, c \in \mathbb{Z} に対して

  •  (b + a \mathbb{Z}) + (c + a \mathbb{Z}) = (b + c) + a \mathbb{Z}

と定義すると、 \mathbb{Z} / a \mathbb{Z} はアーベル群になります。この元を剰余類と呼びます。

 a \ne 0 とし  f : \mathbb{Z} \to \mathbb{Z} / a \mathbb{Z} n \mapsto n + a \mathbb{Z} とします。 f は群の準同型となります。 b \in \mathbb{Z} に対して  r = \min (\mathbb{N} \cap f^{-1}(f(b))) とおきます。

 a > 0 のとき  r \ge a とすると  r = a + c となる  c \in \mathbb{N} が存在します。 f(c) = f(r) = f(b) となり、 r の最小性から  r \le c となります。 r = a + c から  a + c \le c となり  a \le 0 となって  a > 0 に矛盾します。

 a < 0 のとき  r \ge -a とすると  r = -a + c となる  c \in \mathbb{N} が存在します。 f(c) = f(r) = f(b) となり、 r の最小性から  r \le c となります。 r = -a + c から  -a + c \le c となり  -a \le 0 となって  a < 0 に矛盾します。

よって

  •  a > 0 のとき  0 \le r < a
  •  a < 0 のとき  0 \le r < -a

となります。 r b a で割った余りと呼びます。

環と半環

集合  R に加法と乗法という2つの二項演算が存在して

  • 加法に関して可換なモノイド
  • 乗法に関して半群(結合法則を満たす)
  • 乗法の加法に対する分配法則を満たす

ならば  R は半環であるといいます。

  •  R = \{0\} のとき自明であるといいます。
  • 乗法の単位元が存在するとき単位元( 1 と書きます)をもつ
  • 乗法が可換であるとき可換
  • 加法に関してアーベル群であるとき環

といいます。

 \mathbb{N}単位元をもつ自明ではない可換半環、 \mathbb{Z}単位元をもつ自明ではない可換環となります。

単位元をもつ自明ではない可換半環  R の部分集合全体の集合を  P とします。 X, Y \in P に対して

  •  X+Y = \{x+y \mid x \in X, y \in Y\}
  •  XY = \{xy \mid x \in X, y \in Y\}

と定義します。これらの演算によって  P単位元をもつ自明ではない可換半環となります。

  •  X=\{x\} のとき  X+Y x+Y
  •  X=\{x\} のとき  XY xY

と書きます。

 I \in P

  •  I+I \subseteq I
  •  IR \subseteq I

であるとき  Rイデアルと呼びます。

 I Rイデアルのとき  f: R \to P f(x) = x + I とすると

  •  f(x+y) = (x + y) + I = (x + I) + (y + I) = f(x) + f(y)
  •  f(xy) = (xy) + I = (x + I)(y + I) = f(x)f(y)

となるので、 f(R)単位元をもつ可換半環、 f は半環の準同型となります。
 f(R) が環のとき  f(R)単位元をもつ可換環 f は環の準同型となります。

 X \in P のとき  X^* = X \cup (X+X) \cup (X+X+X) \cup \cdots とします。 I, J Rイデアルのとき  I * J = (IJ)^* とすると、 Rイデアル全体の集合  S は加法  + と乗法  * に関して単位元をもつ自明ではない可換半環となります。

最大公約数

 a \in \mathbb{Z} に対して  a \mathbb{Z} = \{ an \mid n \in \mathbb{Z} \} の元を  a の倍数と呼びます。 b \in a \mathbb{Z} に対して  a b の約数と呼びます。

  •  b \mathbb{Z} \subseteq a \mathbb{Z}  \iff  b a の倍数  \iff  a b の約数

 a, b, c \in \mathbb{Z} に対して

  •  c b の約数かつ  c b の約数

であるとき  c a b の公約数と呼びます。

  •  a \mathbb{Z} + b \mathbb{Z} \subseteq c \mathbb{Z}  \iff  c a b の公約数

となります。

 a \mathbb{Z} + b \mathbb{Z} \subseteq \mathbb{Z} = 1 \mathbb{Z} なので  1 a b の公約数となります。

 \max \{ c \in \mathbb{Z} \mid a \mathbb{Z} + b \mathbb{Z} \subseteq c \mathbb{Z} \} a b の最大公約数と呼びます。

 e = \min \{ c, d \in \mathbb{N} \mid a \mathbb{Z} + b \mathbb{Z} = c \mathbb{Z} + d \mathbb{Z} \} とおきます。 e > 0 とすると  a \mathbb{Z} + b \mathbb{Z} = e \mathbb{Z} + c \mathbb{Z} c \ge e となる  c \in \mathbb{Z} が存在します。 f: \mathbb{Z} \to \mathbb{Z} / e \mathbb{Z} x \mapsto x + e \mathbb{Z} という写像とし、 r = \min (\mathbb{N} \cap f^{-1}(f(c))) とすると、上の議論より  a \mathbb{Z} + b \mathbb{Z} = e \mathbb{Z} + c \mathbb{Z} = r \mathbb{Z} + c \mathbb{Z} r < e となって  e の最小性に矛盾となります。よって  e = 0 となります。

 a \mathbb{Z} + b \mathbb{Z} = c \mathbb{Z} となって  c a b の最大公約数となります。