「群論の計算(2)」に書いた内容について考えます。
「群論の計算」は「アーベル・ルフィニの定理」(『ガロア理論12講 概念と直観でとらえる現代数学入門 (角川学芸出版単行本)』参照)の一部の計算を多項式の計算と「項書き換え」を使って書こうということを目的としていますが、保留となっています。
同値関係
「エレファントな整数論(20)」の内容を再び書いておきます。(『集合と位相(増補新装版)(数学シリーズ)』§2.8を参照)
集合 上の二項関係
が
- 反射律: 任意の
に対して
- 推移律: 任意の
に対して
ならば
- 対称律: 任意の
に対して
ならば
を満たすとき同値関係と呼びます。 のとき
と
は同値であるといいます。
集合 上の同値関係
が与えられたとき、
に対して
の部分集合
を
の同値類と呼びます。同値類全体の集合を集合
の同値関係
による商集合と呼び、
と書きます。
を
に対応させる全射
を
から
への自然な射影と呼びます。
に対して、
で定義される
上の関係
は同値関係となります。
を
に付随する同値関係と呼びます。(『集合と位相(増補新装版)(数学シリーズ)』問8.3 を参照)
写像による分類
「群論の計算(2)」の内容を書き直していきます。
集合 の部分集合を元とする集合
で、任意の
が
の元のどれかただ一つに属するような
を
の分類(一般的な用語は不明)と呼ぶことにします。
が属する
の元を
とします。
に
を対応させる写像を
とすると、
は
に付随する同値関係による
の同値類となります。
を写像とし、
に対して
とおきます。
は
に付随する同値関係による
の同値類となります。
- 任意の
に対して、
が成り立ちます。
とすると
で
と
の元の個数は一つなので
となります。
よって任意の は
の元のどれかただ一つに属し、
は
の分類となります。
群の剰余類
群 の部分群
と
の元
に対して
を
における
の左剰余類と呼びます。
を
における
の右剰余類と呼びます。
左剰余類全体の集合を とおきます。すなわち
とおきます。
を
と定義します。
は
に付随する同値関係による
の同値類となり、
は
の分類となります。
有限群の部分群の位数
群 の部分群
と
の元
に対して
を左から
をかける写像とすると、
は全単射となります。
全単射 が存在するとき
と
は同値である(これは一般的な用語のようです。上記の同値関係と同様に一般的に定義することは公理的集合論ではできません)といいます。
と
が同値な有限集合であるとき
と
の元の個数は同じ数となります。(ここでは有限集合の説明は省略します)
群 の元の個数が有限であるとき有限群と呼びます。有限群
の元の個数を
の位数と呼び
と書きます。有限群
の部分群
の左剰余類(または右剰余類)の個数を
における
の指数と呼び
と書きます。有限群
の部分群
の左剰余類の全体の集合
は
の分類であり、各左剰余類の間には全単射が定義できるためすべての左剰余類の元の個数は
の元の個数に一致します。したがって
が成り立ちます。