エレファント・ビジュアライザー調査記録

ビジュアルプログラミングで数式の変形を表すことを考えていくブロクです。

集合の計算(9)

前回の(1)を使っているところでモノイドの準同型の場合の結果を使っていましたが、その説明を書き直したと思ったのに書き直していなかったので、改めて書き直します。

モノイドの準同型

 f: M \to N のとき
 \overline{f}: \mathfrak{P}(M) \to \mathfrak{P}(N) \overline{f^{-1}}: \mathfrak{P}(N) \to \mathfrak{P}(M)

  •  \overline{f}(A) = \{ f(x) \mid x \in A \}
  •  \overline{f^{-1}}(U) = \{ x \in G \mid f(x) \in U \}

と定義します。

モノイド  M単位元 e_M と書くことにします。

 M をモノイドとすると  \mathfrak{P}(M) は「部分集合の積」に関するモノイドとなります*1 \{e_M\}単位元となります。(P1)

モノイド  M からモノイド  N への写像  f: M \to N が積と単位元を保存するとき、すなわち

  • 任意の  x, y \in M に対して  f(xy) = f(y)f(y)
  •  f(e_M) = e_N

が成り立つとき  f をモノイドの準同型と呼びます。 f全単射のとき同型と呼び、同型が存在するとき  M N は同型であると言います。

 f: M \to N がモノイドの準同型のとき
 \begin{eqnarray*}
\overline{f}(ST) & = & \{ f(xy) \mid x \in S, y \in T \} \\
 & = & \{ f(x)f(y) \mid x \in S, y \in T \} \\
 & = & \overline{f}(S) \overline{f}(T) \\
\end{eqnarray*}
 \begin{eqnarray*}
\overline{f}(\{e_M\}) & = & \{ f(e_M) \} \\
 & = & \{ e_N \} \\
\end{eqnarray*}
が成り立つので  \overline{f} はモノイドの準同型となります。(P2)

 x \in M が逆元  x^{-1} を持つとき

  •  f(x^{-1})f(x) = f(x^{-1}x) = f(e_M) = e_N
  •  f(x)f(x^{-1}) = f(xx^{-1}) = f(e_M) = e_N

となるので  f(x^{-1}) f(x) の逆元となります。(P3)

よって  M の任意の元が逆元を持つとき( M が群のとき)  \overline{f}(M) の任意の元は逆元を持ちます( \overline{f}(M) は群となります)。(1')

ここではモノイドの部分集合で群であるものも部分群と呼ぶことにします(本来は群の部分集合で群であるものが部分群)。

群の準同型

この節では写像の像と逆像の記法は通常の記法に戻します。すなわち写像  f: X \to Y に対して

  •  X' \subseteq X に対して  f(X') = \{ f(x) | x \in X' \}
  •  y \in Y に対して  f^{-1}(y) = \{ x \in X | f(x) = y \}
  •  Y' \subseteq Y に対して  f^{-1}(Y') = \{ x \in X | f(x) \in Y'\}

と書きます。

 G から群  H への写像  f: G \to H が積を保存するとき、すなわち

  • 任意の  x, y \in G に対して  f(xy) = f(y)f(y)

が成り立つとき  f を群の準同型と呼びます。 f全単射のとき同型と呼び、同型が存在するとき  G H は同型であると言います。

モノイドの準同型の結果(P2)より

  • 任意の  G の部分集合  S Tに対して  f(ST) = f(S)f(T)

が成り立ちます。

 f(e_G)^2 = f(e_G) が成り立つので  f(e_G) H単位元となります。

モノイドの準同型の結果(P3)より

  • 任意の  G の部分集合  S に対して  f(S^{-1}) = f(S)^{-1}

が成り立ちます。

群の準同型の像

 G f による像  f(G) \mathrm{Im} \ f と書きます。

  •  f(G)^2 = f(G)
  •  f(G)^{-1} = f(G)

が成り立ちます。よって  f(G) H の部分群となります。

モノイドの準同型の結果(1')より  G が群、 H がモノイド、 f: G \to H がモノイドの準同型の場合にも f(G) H の部分群となります( H の部分集合で群となります)。(1)

*1:べき集合モノイド(「wikipedia:モノイド」参照)