エレファント・コンピューティング調査報告

極限に関する順序を論理プログラミングの手法を使って指定することを目指すブロクです。

論理計算と随伴関手(8)

対角関手

(Wikipediaを参照)

対角関手の定義

 \mathbf{J} \mathbf{C} に関して対角関手  \Delta: \mathbf{C} \rightarrow \mathbf{C}^\mathbf{J} は以下のようなものとなります。

  •  \mathbf{C} の対象  A に対して  \Delta(A) \mathbf{C}^\mathbf{J} の対象となります。これは以下のような関手  \Delta(A): \mathbf{J} \rightarrow \mathbf{C} となります。
    •  \mathbf{J} の対象に対しては  \mathbf{C} の対象  A を対応させる。
    •  \mathbf{J} の射に対しては  \mathbf{C} の恒等射  id_A: A \rightarrow A を対応させる。
  •  \mathbf{C} の射  h: A \rightarrow B に対して  \Delta(h) \mathbf{C}^\mathbf{J} の射となります。これは以下のような  \Delta(A) から  \Delta(B) への自然変換  \eta となります。
    •  \mathbf{J} の対象  J に対して  \mathbf{C} の射  \eta_J: \Delta(A)(J) \rightarrow \Delta(B)(J) が対応している必要がある。これは  h: A \rightarrow B を対応させるものとする。 \mathbf{J} の射  l: J \rightarrow K に対して  \Delta(A)(l) \mathbf{C} の恒等射  id_A: A \rightarrow A \Delta(B)(l) \mathbf{C} の恒等射  id_B: B \rightarrow B であるため  \eta_K \circ \Delta(A)(l) = \Delta(B)(l) \circ \eta_J が成り立ち、この対応は自然変換となる。

対角関手と極限

 \Delta から関手  F: \mathbf{J} \rightarrow \mathbf{C} への普遍射は  F: \mathbf{J} \rightarrow \mathbf{C} の極限となります。

 \Delta から関手  F: \mathbf{J} \rightarrow \mathbf{C} への普遍射は  \mathbf{C} の対象  P \mathbf{C}^\mathbf{J} の射  \varphi: \Delta(P) \rightarrow F の対  (P, \varphi)で以下の普遍性を満たすものを言います。

  •  \mathbf{C} の対象  Q \mathbf{C}^\mathbf{J} の射  \psi: \Delta(Q) \rightarrow F に対して  \psi = \varphi \circ \Delta(u) を満たす射  u: Q \rightarrow P が一意的に存在する。

 \require{AMScd}
\begin{CD}
\Delta(Q) @> \psi >> F \\
@V \Delta(u) VV @VV id_F V \\
\Delta(P) @>> \varphi > F
\end{CD}

 \varphi: \Delta(P) \rightarrow F が自然変換であることから、 \mathbf{J} の対象  J に対して  \mathbf{C} の射  \varphi_J: \Delta(P)(J) \rightarrow F(J) が存在して以下の条件を満たします。

  •  \mathbf{C} の射  l: J \rightarrow K に対して以下の図式が可換となります。

 \begin{CD}
\Delta(P)(J) @> \Delta(P)(l) >> \Delta(P)(K) \\
@V \varphi_J VV @VV \varphi_K V \\
F(J) @>> F(l) > F(K)
\end{CD}
すなわち
 \begin{CD}
P @> id_P >> P \\
@V \varphi_J VV @VV \varphi_K V \\
F(J) @>> F(l) > F(K)
\end{CD}
が可換となります。これは  (P, \varphi) が関手  F: \mathbf{J} \rightarrow \mathbf{C} への錐であることを表しています。同様に  (Q, \psi) F への錐となります。上記の普遍性は  (P, \varphi) の普遍性を表しているので  (P, \varphi) は極限となります。

対角関手と引き戻し

以前の記事と同様、圏  \mathbf{J} を対象  X' Y' Z' と射  f': X' \rightarrow Z' g': Y' \rightarrow Z' と恒等射からなる圏とします。
 \begin{CD}
 @. Y' \\
@. @VV g' V \\
X' @>> f' > Z'
\end{CD}
これに対応する圏  \mathbf{C} の対象と射を以下の図のものとします。
 \begin{CD}
 @. Y \\
@. @VV g V \\
X @>> f > Z
\end{CD}
このとき  (P, \varphi) はこの図の  f g に対する引き戻しとなります。

対角関手  \Delta: \mathbf{C} \rightarrow \mathbf{C}^\mathbf{J} は以下のようなものとなります。

  •  \mathbf{C} の対象  A に対して  \Delta(A) \mathbf{C}^\mathbf{J} の対象となります。これは以下のような関手  \Delta(A): \mathbf{J} \rightarrow \mathbf{C} となります。
    •  \mathbf{J} の対象に対しては  \mathbf{C} の対象  A を対応させる。
    •  \mathbf{J} の射に対しては  \mathbf{C} の恒等射  id_A: A \rightarrow A を対応させる。
  •  \mathbf{C} の射  h: A \rightarrow B に対して  \Delta(h) \mathbf{C}^\mathbf{J} の射となります。これは以下のような  \Delta(A) から  \Delta(B) への自然変換となります。
    •  \mathbf{J} の対象  J に対して  \mathbf{C} の射  h: A \rightarrow B を対応させる。

対角関手と随伴関手

極限を取る操作は  \mathbf{C}^\mathbf{J} から  \mathbf{C} への関手となります。この関手  \mathbf{lim} は対角関手  \Delta の右随伴関手となります。

 \mathbf{C}^\mathbf{J} の各対象  F に対して、 \Delta から  F への普遍射が存在するとき  \Delta を左随伴関手と呼びます。

 \mathbf{C}^\mathbf{J} の各対象  F に関して  \mathbf{C} の対象  A_F \Delta から  F への普遍射  \varepsilon_F : \Delta(A_F) \rightarrow F を決めると、関手  \mathbf{lim} : \mathbf{C}^\mathbf{J} \rightarrow \mathbf{C} で、 \mathbf{lim} F = A_F と、任意の  \mathbf{C}^\mathbf{J} の射  \zeta : F \rightarrow F' について  \varepsilon_{F'} \circ \Delta \mathbf{lim}(\zeta) = \zeta \circ  \varepsilon_F が成り立つものが一意的に存在します。このとき、 \Delta \mathbf{lim} の左随伴であると言います。可換図式で書くと以下のようになります。
 \require{AMScd}
\begin{CD}
\Delta(A_F) @> \Delta \mathbf{lim}(\zeta) >> \Delta(A_{F'}) \\
@V \varepsilon_F VV @VV \varepsilon_{F'} V \\
F @>> \zeta > F'
\end{CD}

 \mathbf{C} の各対象  A に対して、 A から  \mathbf{lim} への普遍射が存在するとき  \mathbf{lim} を右随伴関手と呼びます。

 \mathbf{C} の各対象  A に関して  \mathbf{C}^\mathbf{J} の対象  F_A A から  \mathbf{lim} への普遍射  \eta_A : A \rightarrow \mathbf{lim}(F_A) を決めると、関手  \Lambda : \mathbf{C}^\mathbf{J} \leftarrow \mathbf{C} で、 \Delta A = F_A と、任意の  \mathbf{C} の射  g : A \rightarrow A' について  \mathbf{lim}\Delta(g) \circ  \eta_A = \eta_{A'} \circ  g が成り立つものが一意的に存在します。このとき、 \mathbf{lim} \Delta の右随伴であると言います。可換図式で書くと以下のようになります。
 \require{AMScd}
\begin{CD}
A @> g >> A' \\
@V \eta_A VV @VV \eta_{A'} V \\
\mathbf{lim}(F_A) @>> \mathbf{lim}\Delta(g) > \mathbf{lim}(F_{A'})
\end{CD}

集合と逆像

以下では集合の圏  \mathbf{Set} で考えます。

 X Z を集合、 f: X \rightarrow Z とします。 Y \subseteq Z とし、 g: Y \rightarrow Z を包含写像とします。

 f g の引き戻しは,逆像  P=f^{-1}(Z) P から  X への包含写像  i_P f P への制限  f|_P の組となります。 x \in P に対して  f(i_P(x)) = g(f|_P(x)) = f(x) となるので以下の可換図式が成り立ちます。

 \begin{CD}
P @> f|_P >> Y \\
@V i_P VV @VV g V \\
X @>> f > Z
\end{CD}

集合  Q q_X: Q \rightarrow X q_Y: Q \rightarrow Y f \circ q_X = g \circ q_Y を満たすとします(以下の図式は可換)。

 \begin{CD}
Q @> q_Y >> Y \\
@V q_X VV @VV g V \\
X @>> f > Z
\end{CD}

このとき  u: Q \rightarrow P u(y) = q_X(y) によって定義することができます。なぜなら  f(u(y)) = f(q_X(y)) = q_Y(x) \in Y より  u(y) \in f^{-1}(Y) = P となるためです。
 q_x(y) = i_P(q_X(y)) = (i_p \circ u)(y)
 q_y(y) = g(q_Y(y)) = f(q_X(y)) = f|_P(q_X(y)) = (f|_p \circ u)(y)
が成り立つので  (P, i_P, f|_P) は引き戻しとなります。

論理プログラミングの「極限」のところで述べた

 \displaystyle \bigcup_{n \in \mathbb{N}} \rho^{-n}(\delta \vdash t)

は射影的極限と考えることができます。引き戻しも射影的極限の一種と考えることができます。

環と射影的極限

集合に関する議論を環の圏で考えてみます。まず引き戻しと射影的極限の関連性について調べていきます。