エレファント・ビジュアライザー調査記録

ビジュアルプログラミングで数式の変形を表すことを考えていくブロクです。

モノイド的構文解析(10)

数学基礎論 増補版』に「半群の語の問題」という用語を見つけたので ChatGPT で調べてみました。

  • 半群の語の問題」とは何ですか
  • 「文脈自由文法」とは何ですか
  • オートマトンとは何ですか
  • 「文脈自由文法」を半群の語で説明してください
  • ある決まった文字の集合で生成される文字列全体(と入力したが正しくは文字列全体の冪集合)は、文字列の連結を積、和集合を和とする冪等半環となります。「文脈自由文法」をこの冪等半環を使って説明してください

と入力すると以下のような答えが戻ってきました。この項で扱っているのはこのような問題です。この問題を表す一般的な用語があると思うのですが、検索しても見つからないのであるのかどうかわかりません。

文脈自由文法を冪等半環 (idempotent semiring)の視点から説明するには、文法による文字列の生成を冪等半環の演算(積と和)を使った操作としてモデル化することが重要です。以下では、その詳細を解説します。

1. 冪等半環の基礎

まず、冪等半環の定義を簡単に復習します。

1. 集合:
冪等半環は、集合   R とその上の2つの演算   (+, \cdot) に基づく構造です。

2.   + :

3.   \cdot :

4. 文字列の集合としての冪等半環:

  •   R は文字列の集合。
  •   + 和集合(重複しない結合)。
  •   \cdot 文字列の連結半群構造)。

2. 文脈自由文法と冪等半環の対応付け

文脈自由文法   G = (N, \Sigma, P, S) を冪等半環を使って表現します。

冪等半環の要素としての言語
  • 言語   L (文字列の集合)を、冪等半環の元とみなします。
  • 言語   L_1   L_2 の和は   L_1 + L_2 = L_1 \cup L_2
  • 言語   L_1   L_2 の積は   L_1 \cdot L_2 = \{ uv \mid u \in L_1, v \in L_2 \} (文字列の連結による生成)。
文法規則と冪等半環
  • 生成規則   P を、冪等半環の演算として解釈します。

たとえば、生成規則   A \to \alpha_1 \mid \alpha_2 を次のように対応付けます:
 
  A = \alpha_1 + \alpha_2
ここで:

  •   + は「選択肢」を表し、生成可能な複数の語の集合を統合します。
  • 個々の生成規則は「操作の閉包」により適用される。
  • 生成規則   A \to BC を次のように解釈します:

 
  A = B \cdot C
ここで:

  •   \cdot は「文字列の連結」を表し、非終端記号   B   C で生成された文字列を連結します。

3. 文脈自由文法の再帰方程式

文脈自由文法は、非終端記号   A \in N ごとに、次のような再帰的な方程式系で表現できます:
 \displaystyle
A = \sum_{(A \to \alpha) \in P} \prod_{X \in \alpha} X
ここで:

  •   \sum は規則   A \to \alpha_1 \mid \alpha_2 \mid \dots の「選択」を表す和集合。
  •   \prod は生成規則   A \to BC \dots における「連結」を表す積。

4. 文脈自由文法の例を冪等半環で説明

文法   G を次のように定義します:

  • 非終端記号:  N = \{S\}
  • 終端記号:  \Sigma = \{a, b\}
  • 生成規則:   S \to aSb \mid \epsilon
  • 開始記号:  S
冪等半環での解釈

1. 再帰方程式:
 
   S = aSb + \epsilon
ここで:

  •   + は選択肢(  aSb または   \epsilon )を表す和集合。
  •   \cdot は文字列の連結を表す積。

2. 再帰的な展開:
 
   S = \epsilon + (a \cdot S \cdot b)
この式を繰り返し代入すると、次のような解になります:
 
   S = \epsilon + (a \cdot \epsilon \cdot b) + (a \cdot a \cdot \epsilon \cdot b \cdot b) + \dots
つまり、  S は次の言語を生成します:
 
   L(S) = \{ a^n b^n \mid n \geq 0 \}

5. 冪等半環の利点

冪等半環の枠組みで文脈自由文法を説明することで、次の利点があります:
1. 代数的解析が可能
文法の生成規則を再帰方程式として表現し、それを解くことで、生成される言語を代数的に理解できます。

2. 効率的な計算
冪等性(  a + a = a )により、重複を考慮せず計算が簡素化される。

3. 構造的な視点の提供
文法とその生成言語が、和と積という基本的な演算で統一的に記述されるため、構造の解析や拡張が容易になります。

6. まとめ

文脈自由文法を冪等半環の枠組みで説明すると、非終端記号と終端記号による言語生成のプロセスを、文字列の和集合(和)と連結(積)という代数的演算としてモデル化できます。この視点は、文法をより数学的・代数的に解析するのに有用で、形式言語理論や自動構文解析器の設計における理論的基盤を提供します。