前回の議論を整数に対応するように書き直していきます。
整数の順序による表記
順序集合 の部分集合 に対して、任意の に対して であるような が存在するとき は下に有界、任意の に対して であるような が存在するとき は上に有界であると言います。
を順序集合で
- (Z3) かつ は下に有界ならば は最小元を持つ
とします。 とすると が最小元を持つので は全順序集合となります。
は整数全体を表すものですが、前回と同様ここでは整数の定義とは考えません。整数の定義は後で行います。
さらに
- (Z4) は上に有界ではない
とします。すると を
と定義することができます( は の最小元を表します)。 となります。
ならば となります。同様に ならば となります。よって
- (Z5)
となります。
- (Z6) ならば となる が存在する
とします。(Z5)より に を対応させる写像 を定義することができて、 は の逆写像となります。
とします。 とおきます(これは自然数全体を表すものとなります)。
前回の議論より
- (N1) が以下の条件を満たすならば
- 、
が成り立ちます。
を
- を満たす が存在し、
- ならば を満たす が存在する
ような集合とすると、
は(N1)の の条件を満たすので となります。よって
ならば によって のとき とすると写像 を定義することができます(帰納的定義)。
自然数の定義
を から への全単射全体の集合、 を の恒等写像とします。 は写像の合成に関して群となり、 は単位元となります。 の演算を と書くことにします。 を で生成された の部分群、 を で生成された の部分モノイドとします。 はアーベル群、 は可換なモノイドとなります。 を 、 を と書きます。(後述)
を
- 、
と帰納的に定義することができます。
となるので
が成り立ちます。よって に順序 を
と定義することができ、 は(N1)を満たします。
- のとき
が成り立つので帰納法により任意の に対して が成り立ちます。
- のとき
が成り立つので帰納法により任意の に対して が成り立ちます。
よって は可換なモノイドとなります。
のとき とおくと となるので となります。逆に
- のとき
より を満たす が存在すれば となります。よって
となります。このとき と書きます。