エレファント・ビジュアライザー調査記録

ビジュアルプログラミングで数式の変形を表すことを考えていくブロクです。

エレファントな整数論(4)

前回の議論を整数に対応するように書き直していきます。

整数の順序による表記

順序集合  A の部分集合  X に対して、任意の  x \in X に対して  a \le x であるような  a \in A が存在するとき  X は下に有界、任意の  x \in X に対して  a \ge x であるような  a \in A が存在するとき  X は上に有界であると言います。

 Z \ne \varnothing を順序集合で

  • (Z3)  \varnothing \ne X \subseteq Z かつ  X は下に有界ならば   X は最小元を持つ

とします。 x, y \in Z とすると  \{ x, y \} が最小元を持つので  Z は全順序集合となります。

 Z は整数全体を表すものですが、前回と同様ここでは整数の定義とは考えません。整数の定義は後で行います。

さらに

  • (Z4)  Z は上に有界ではない

とします。すると  s: Z \to Z

  •  s(x) = \min \{ y \in Z \mid x < y \}

と定義することができます( \min S S の最小元を表します)。 x < s(x) となります。

 x < y ならば  s(x) \le y < s(y) となります。同様に  y < x ならば  s(y) \le x < s(x) となります。よって

  • (Z5)  s(x) = s(y) \iff x = y

となります。

  • (Z6)  x \in Z ならば  s(y) = x となる  y \in Z が存在する

とします。(Z5)より  x y を対応させる写像  s^{-1} を定義することができて、 s^{-1} s の逆写像となります。

 z \in Z とします。 N = \{ x \in Z \mid z \le x \} とおきます(これは自然数全体を表すものとなります)。

前回の議論より

  • (N1)  X \subseteq N が以下の条件を満たすならば  X = N
    •  0 \in X
    •  x \in X \implies s(x) \in X

が成り立ちます。

 R \subseteq N \times A

  •  (z, a) \in R を満たす  a \in A が存在し、
  •  (x, a) \in R ならば  (s(x), b) \in R を満たす  b \in A が存在する

ような集合とすると、
 X = \{ x \in N \mid (x, a) \in R \ となる\ a \in A  \ が存在する \}
は(N1)の  X の条件を満たすので  X = N となります。よって
 (x, a), (x, b) \in R \implies a = b
ならば  R によって  (x, a) \in R のとき  f(x) = a とすると写像  f: N \to A を定義することができます(帰納的定義)。

自然数の定義

 G Z から  Z への全単射全体の集合、 0 \in G Z の恒等写像とします。 G写像の合成に関して群となり、 0単位元となります。 G の演算を  + と書くことにします。 \mathbb{Z} s で生成された  G の部分群、 \mathbb{N} s で生成された  G の部分モノイドとします。 \mathbb{Z} はアーベル群、 \mathbb{N} は可換なモノイドとなります。 s 1 s^{-1} -1 と書きます。(後述)

 f: N \to \mathbb{N}

  •  f(z) = 0
  •  f(s(x)) = 1 + f(x)

帰納的に定義することができます。

 f(x)(z) = x となるので
 x = y \iff f(x) = f(y)
が成り立ちます。よって  \mathbb{N} に順序  \le
 x \le y \iff f(x) \le f(y)
と定義することができ、 \mathbb{N} は(N1)を満たします。

  •  0 + 1 = 1 = 1 + 0
  •  a + 1 = 1 + a のとき  a + 1 + 1 = 1 + a + 1

が成り立つので帰納法により任意の  a \in \mathbb{N} に対して  a + 1 = 1 + a が成り立ちます。

  •  a + 0 = a = 0 + a
  •  a + b = b + a のとき  a + b + 1 = b + a + 1 = b + 1 + a

が成り立つので帰納法により任意の  a, b \in \mathbb{N} に対して  a + b = b + a が成り立ちます。

よって  \mathbb{N} は可換なモノイドとなります。

 a \le b のとき  c = \min \{ x \in \mathbb{N} \mid a + x \le b \} とおくと  a + c \le b < a + c + 1 となるので  a + c = b となります。逆に

  •  a \le a
  •  a \le b のとき  a \le b + 1

より  a + c = b を満たす  c \in \mathbb{N} が存在すれば  a \le b となります。よって
 a \le b \iff a + c = b \ を満たす \ c \in \mathbb{N} \ が存在する
となります。このとき  c = b - a と書きます。