実数
この議論はガロア理論には必要ないと思われるのですが、代数学の基本定理を説明するために必要なので書いておきます。
有理数の順序
を有理数全体の集合とします。正または
の有理数全体の集合を
とおきます。
の元は正または
の整数
と正の整数
で
と書くことができるものとなっています。
のときに
とすることにより
に全順序
を定義することができます。負の有理数についても同様に定義することができるので
に全順序
を定義することができます。
有理数のコーシー列
有理数からなる数列 を
と書くことにします。すべての項が
である数列
を
と書くことにします。有理数からなる数列全体の集合を
とします。
に加法、乗法を
と定義します。 は体となります。
を
と定義すると体の準同型となります。
と
が
- 任意の
に対して
であるとき と定義します。
有理数からなる数列 が
であるときコーシー列と呼びます。
をコーシー列とすると、
となります。
有理数からなる数列 と有理数
に対して、任意の有理数の開集合
で
であるものに対して自然数
が存在して
- 任意の自然数
に対して
ならば
であるとき と定義します。
と定義します。 のとき
となります。
と
に対して
を
とおきます。
を満たす
が存在するとき
は有界であると言います。
をコーシー列とします。
をとります。
- 任意の
に対して
となる が存在します。
を
の最大値とすると
となります。よってコーシー列は有界となります。
を順序を保存する写像、すなわち
ならば
であるような写像とするとき
を
の部分列と言います。コーシー列の部分列はコーシー列となります。
を任意の
に対して
であるコーシー列で
とします。
から
- 任意の
に対して
が存在して
を満たす が存在します。コーシー列であることから
- 任意の
に対して
となる が存在します。
が存在して
となります。
に対して
となります。よって
となります。
よって となって
は有界となります。
、
をコーシー列とすると
、
、
であることから 、
、
もコーシー列となります。
であることから のある部分列
もコーシー列となります。
実数の構成
有理数のコーシー列全体の集合を とおきます。
を
と定義します(
は
の冪集合)。
となる
が存在すれば三角不等式より
が成り立つので は
の分類になっています。
とおきます。
の元を実数と考えることができます。有理数のコーシー列の性質から
に加減乗除を定義することができて
は体となります。
は体の単射準同型となります。
これはたとえば有理数のコーシー列 を実数
と考えることに当たります。
実数の順序
と
が存在して
となるとき
と定義します。
が成り立ちます。
、
とします(
を
と書きます)。任意の
に対して
となります。
となる
が存在します。
から後の部分列もコーシー列となるのでこの部分列も
の元となります。上記の議論と同様に
、
となる
が存在します。
が決まったとき
、
となる
をとることができるので、帰納的に
をとることができてこの列によって部分列を作ることができます。この部分列も
の元であり、すべての
に対して
であるので
となります。
この を
と考えると
が成り立ちます。よって
が成り立ちます。
、
、
とします。
の元
と
が存在します。
であり
であるから
となり
となります。よってこの
を
と考えると
が成り立ちます。
この によって
は全順序集合となります。
実数の距離関数 と開集合全体の集合
、
を有理数と同様に定義します。
実数のコーシー列
実数のコーシー列を有理数のコーシー列と同様に定義します。実数のコーシー列全体の集合を とおきます。
と定義します。 のとき
と定義します。
を
と定義します。
は
の分類になっています。
をとります。
を実数のコーシー列とすると、
となります。
連続関数
が任意の実数の開集合
に対して
が実数の開集合であるとき
は連続であると言います。
実数の数列 が
を満たすとします。すなわち任意の
に対して
が存在して
- 任意の
に対して
が成り立つとします。 を連続とします。
をとると
は実数の開集合となります。よって
を満たす
が存在します。
- 任意の
に対して
を満たす が存在します。任意の
に対して
となります。よって
となります。
中間値の定理
を連続とし
を
、
である実数とします。
となる
に対して
となる
が存在して
が成り立ちます。
[証明] 数列 、
、
を次のように作ります。
まず 、
とおきます。
とおきます。
のとき
、
とおきます。
のとき
、
とおきます。
これを繰り返して
とおきます。
のとき
、
、
のとき
、
と帰納的に定義します。
はコーシー列なので
が存在して
となります。
、
とおくと
、
は開集合となります。
と仮定すると
となって
となります。
が連続であることから
、
は開集合となります。
であるとすると
が存在して
となります。
となる
をとることができて
となって
となります。
となって矛盾となります。
としても同様に矛盾となります。よって
となります。[証明終わり]
を奇数、
を実数の関数とします。このとき
を満たす実数
が存在します。
[証明] とおきます。
とおき
とすると
となります。
、
、
となります。
は奇数なので
となり
となります。
かつ
とすると
かつ
とすると
となります。よって を満たす実数
、
を満たす実数
が存在します。
は連続関数となるので中間値の定理より
を満たす実数
が存在します。[証明終わり]