エレファント・ビジュアライザー調査記録

ビジュアルプログラミングで数式の変形を表すことを考えていくブロクです。

エレファントな整数論(21)

「エレファントな整数論(3)」で書いたような内容ですが、また書き直していきます。

全射単射・有限集合

 X, Y を集合、 f: X \to Y写像とします。任意の  x_1, x_2 \in X に対して  f(x_1) = f(x_2) ならば  x_1 = x_2 であるとき、 f単射と呼びます。任意の  y \in Y に対して  y = f(x) となる  x \in X が存在するとき、 f全射と呼びます。 f全射かつ単射であるとき全単射と呼びます。

 f全単射であるとき、 f全射なので  y \in Y に対して  y = f(x) となる  x が存在し、 f単射なのでこの  x は一意的となります。よって  g: Y \to X g(y) = x と定義することができます。 g \circ f = 1_X ( X の恒等写像)、 f \circ g = 1_Y ( Y の恒等写像)となります。 g f の逆写像と呼び  f^{-1} と書きます。

集合  X に対して以下の条件(F1)が成り立つとき、 X を有限集合と呼びます。有限集合でないとき無限集合と呼びます。

(F1)は以下の(F2)と同値となります。

[証明]  (F1) \Longrightarrow (F2): (F1)を仮定し、 f: X \to X全射とします。(選択公理より)  g: X \to X g(x) \in f^{-1}(x) となるように定義することができます。 g単射となり、(F1)より全単射となります。よって  f = g^{-1}全単射となります。

 (F2) \Longrightarrow (F1): (F2)を仮定し、 f: X \to X単射とします。 g: X \to X x \in f(X) のとき  g(x) \in f^{-1}(x) となるように定義することができます。 x \notin f(X) のときは  g(x) 任意の  X の元とします。 g全射となり、(F2)より全単射となります。よって  f = g^{-1}全単射となります。[証明終わり]

順序関係

集合  O 上の二項関係  \le

  • 反射律: 任意の  x \in O に対して  x \le x
  • 推移律: 任意の  x , y, z \in O に対して  x \le y \le z ならば  x \le z

を満たすとき前順序と呼びます。さらに

  • 反対称律: 任意の  x , y \in O に対して  x \le y かつ  y \le x ならば  x = y

を満たすとき半順序と呼びます。単に順序という場合は半順序のことを表すとします。さらに

  • 任意の  x , y \in O に対して  x \le y または  y \le x

を満たすとき全順序と呼びます。

 x \le y y \ge x と書くこともできます。 x \le y かつ  x \ne y のとき  x < y x \ge y かつ  x \ne y のとき  x > y と書きます。

集合  O 上の二項関係  \le が前順序のとき二項関係  \cong
 x \cong y \iff x \le y \ かつ \ y \le x
とおくと

  • 反射律: 任意の  x \in O に対して  x \cong x
  • 推移律: 任意の  x , y, z \in O に対して  x \cong y \cong z ならば  x \cong z
  • 対称律: 任意の  x , y \in O に対して  x \cong y ならば  y \cong x

を満たすので同値関係となります。この同値関係による同値類の全体を  \bar{O} とおきます。 x \in O を含む同値類を  \bar{x} とおきます。

 x \cong x' y \cong y' とします。 x \le y ならば  x' \le x \le y \le y' より  x' \le y' x' \le y' ならば  x \le x' \le y' \le y より  x \le y となるので、

  •  x \le y \iff x' \le y'

が成り立ちます。よって  \bar{O}二項関係  \leqq \bar{x} \leqq \bar{y} \iff x \le y と定義することができます。 \leqq は半順序となります。

集合  O 上の前順序  \le に対して、

  • (WF1)  O の任意の空でない部分集合が極小元を持つ

が成り立つとき  \le は整礎(well-founded)であるといいます。(Wikipediaでは、二項関係に対して「整礎」が定義されています。また、半順序に対しても「整礎」が定義されています。ここでは、前順序に対して「整礎」を定義します。)

(WF1) は、以下の条件(WF2)と同値となります。
  • (WF2)  O の元からなる無限降下列が存在しない

[証明] (WF1)⇒(WF2): (WF1)を仮定します。 x_1 > x_2 > x_3 > \cdots O の元の無限個の列とすると、(WF1)より  X = \{x_1, x_2, x_3, \cdots \} の極小元が存在します。極小元を  x_i とすると  x_i > x_{i+1} であり、これは  x_i が極小元であることに反します。よって(WF2)が成り立ちます。

(WF2)⇒(WF1): (WF1)が成り立たないと仮定します。極小元を持たない  O の空でない部分集合  X が存在します。 X は極小元を持たないので  x \in X に対して  x > y となる  y \in X が存在します。この  y y(x) と書くことにします。

 X は空でないので  x_1 \in X が存在します。 x_{i+1} = y(x_i)帰納的に定義すると  x_1 > x_2 > x_3 > \cdots という無限個の列が存在するので(WF2)が成り立ちません。[証明終わり]

 \le が全順序であるとき、整列順序と呼び、 O を整列集合と呼びます。

写像と順序の関係

 M を集合、 s: M \to M写像とします。 M の部分集合全体の集合を  \mathfrak{P}(M) とします。 \bar{s}: \mathfrak{P}(M) \to \mathfrak{P}(M) \displaystyle \bar{s}(X) = \bigcup_{x \in X} \{s(x)\} = \{ s(x) \mid x \in X \} とします。

  •  \mathcal{R}_x = \{ X \in \mathfrak{P}(M) \mid x \in X \ かつ \ \bar{s}(X) \subseteq X \}

とおきます。

 s^*: M \to \mathfrak{P}(M) x \in M に対して

  •  \displaystyle s^*(x) = \bigcap \mathcal{R}_x

( \mathcal{R}_x に属する  M の部分集合全体の共通部分)とおくと(これは  s^*(x) = \{x, s(x), s^2(x), \cdots \} = \{ s^n(x) \mid n \in \mathbb{N} \} を表すものとなります)

  • (O1-1)  x \in s^*(x)
  • (O1-2)  \bar{s}(s^*(x)) \subseteq s^*(x)

が成り立ちます。よって

  • (O1)  s^*(x) \in \mathcal{R}_x

となります。また、

  • (O2)  X \in \mathcal{R}_x \implies s^*(x) \subseteq X

が成り立ちます。また、(O1-1)、(O1-2)より

  • (O3)  s(x) \in s^*(x)

が成り立ちます。以下の(O4)が成り立ちます。

(O4)  s^*(x) \supseteq s^*(y) \iff y \in s^*(x)

[証明]  s^*(x) \supseteq s^*(y) とすると (O1-1)より  y \in s^*(y) \subseteq s^*(x) となります。

 x \in M に対して  X = \{ y \in s^*(x) \mid s^*(x) \supseteq s^*(y) \} とおきます。 x \in X \bar{s}(X) \subseteq X となるので  X \in \mathcal{R}_x となります。よって  s^*(x) = \bigcap \mathcal{R}_x \subseteq X となります。

 y \in s^*(x) とすると  y \in s^*(x) \subseteq X となるので  s^*(x) \supseteq s^*(y) となります。[証明終わり]

(O5)  s^*(x) = \{x\} \cup s^*(s(x))

[証明]  (\subseteq) : (O1-1)より  x \in s^*(x)、(O1-2)、(O3)より   s^*(s(X)) \subseteq s^*(x) となるので成り立ちます。

 (\supseteq) :  X = \{x\} \cup s^*(s(x)) とおきます。 x \in X \bar{s}(X) \subseteq X となるので  X \in \mathcal{R}_x となります。よって  s^*(x) = \bigcap \mathcal{R}_x \subseteq X となります。[証明終わり]

(O6)  \bar{s}(s^*(x)) = s^*(s(x))

[証明]  (\subseteq) : (O5)より  \bar{s}(s^*(x)) \subseteq \{s(x)\} \cup \bar{s}(s^*(s(x))) \subseteq s^*(s(x)) となるので成り立ちます。

 (\supseteq) :  X = \bar{s}(s^*(x)) とおきます。 s(x) \in X \bar{s}(X) \subseteq X となるので  X \in \mathcal{R}_{s(x)} となります。よって  s^*(s(x)) = \bigcap \mathcal{R}_{s(x)} \subseteq X となります。[証明終わり]

 x, y \in M に対して

  •  x \le y \iff s^*(x) \supseteq s^*(y)

と定義すると  \supseteq が前順序であることから  \le は前順序となります。定義と(O4)より

  • (O7)  x \le y \iff y \in s^*(x)

が成り立ちます。(O3)、(O7)より

  • (O8)  x \le s(x)

が成り立ちます。

 x_0 \in M をとり  N = s^*(x_0) とおきます。

(帰納法)  N \in \mathcal{R}_{x_0} となるので  x \in N に関する条件  p(x)

  •  p(x_0)
  •  p(x) \implies p(s(x))

を満たすならば任意の  x \in N に対して  p(x) が成り立ちます。

写像の分類

以下の条件を考えます。

  •  (N_1) 任意の  x \in N に対して  s(x) \ne x
  •  (N_2) 任意の  x \in N に対して  s(x) \ne x_0
  •  (N_3)  N 上で  s単射
  •  (N_4)  N 上で  \le は全順序
  •  (N_5)  N は無限集合

これらの条件により以下の表のようにタイプ  T_1 から  T_5 に分類することができます。

タイプ  N_1  N_2  N_3  N_4  N_5 図式
 T_1 = N_1 \land N_2 \land N_3  0 \to 1 \to \cdots
 T_2 = N_1 \land N_2 \land \neg N_3 × × ×  0 \to 1 \to \cdots \to n \to \cdots \to n
 T_3 = N_1 \land \neg N_2 × × ×  0 \to 1 \to \cdots \to 0
 T_4 = \neg N_1 \land N_2 × × ×  0 \to 1 \to \cdots \to n \to n
 T_5 = \neg N_1 \land \neg N_2 × × ×  0 \to 0

この表は「○」のところは成り立ち、「×」のところは成り立たないことを表しています。「図式」のところは各タイプの意味を表すものが書かれています。タイプ  T_1自然数を表すものとなります。この表が成り立つことを次回以降示していきたいのですが、この表は自然数の定義となるものなので、自然数を使わない形で示していく予定です。

集合と位相(増補新装版)(数学シリーズ)

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