「エレファントな整数論(3)」で書いたような内容ですが、また書き直していきます。
全射・単射・有限集合
を集合、 を写像とします。任意の に対して ならば であるとき、 を単射と呼びます。任意の に対して となる が存在するとき、 を全射と呼びます。 が全射かつ単射であるとき全単射と呼びます。
が全単射であるとき、 は全射なので に対して となる が存在し、 は単射なのでこの は一意的となります。よって を と定義することができます。 ( の恒等写像)、 ( の恒等写像)となります。 を の逆写像と呼び と書きます。
集合 に対して以下の条件(F1)が成り立つとき、 を有限集合と呼びます。有限集合でないとき無限集合と呼びます。
順序関係
集合 上の二項関係 が
- 反射律: 任意の に対して
- 推移律: 任意の に対して ならば
を満たすとき前順序と呼びます。さらに
- 反対称律: 任意の に対して かつ ならば
を満たすとき半順序と呼びます。単に順序という場合は半順序のことを表すとします。さらに
- 任意の に対して または
を満たすとき全順序と呼びます。
を と書くこともできます。 かつ のとき 、 かつ のとき と書きます。
- 反射律: 任意の に対して
- 推移律: 任意の に対して ならば
- 対称律: 任意の に対して ならば
を満たすので同値関係となります。この同値関係による同値類の全体を とおきます。 を含む同値類を とおきます。
、 とします。 ならば より 、 ならば より となるので、
が成り立ちます。よって に二項関係 を と定義することができます。 は半順序となります。
集合 上の前順序 に対して、
- (WF1) の任意の空でない部分集合が極小元を持つ
が成り立つとき は整礎(well-founded)であるといいます。(Wikipediaでは、二項関係に対して「整礎」が定義されています。また、半順序に対しても「整礎」が定義されています。ここでは、前順序に対して「整礎」を定義します。)
(WF1) は、以下の条件(WF2)と同値となります。
- (WF2) の元からなる無限降下列が存在しない
[証明] (WF1)⇒(WF2): (WF1)を仮定します。 を の元の無限個の列とすると、(WF1)より の極小元が存在します。極小元を とすると であり、これは が極小元であることに反します。よって(WF2)が成り立ちます。
(WF2)⇒(WF1): (WF1)が成り立たないと仮定します。極小元を持たない の空でない部分集合 が存在します。 は極小元を持たないので に対して となる が存在します。この を と書くことにします。
は空でないので が存在します。 と帰納的に定義すると という無限個の列が存在するので(WF2)が成り立ちません。[証明終わり]
が全順序であるとき、整列順序と呼び、 を整列集合と呼びます。
写像と順序の関係
を集合、 を写像とします。 の部分集合全体の集合を とします。 を とします。
とおきます。
を に対して
( に属する の部分集合全体の共通部分)とおくと(これは を表すものとなります)
- (O1-1)
- (O1-2)
が成り立ちます。よって
- (O1)
となります。また、
- (O2)
が成り立ちます。また、(O1-1)、(O1-2)より
- (O3)
が成り立ちます。以下の(O4)が成り立ちます。
(O4)
[証明] とすると (O1-1)より となります。
に対して とおきます。、 となるので となります。よって となります。
とすると となるので となります。[証明終わり]
(O5)
[証明] (O1-1)より 、(O1-2)、(O3)より となるので成り立ちます。
とおきます。、 となるので となります。よって となります。[証明終わり]
(O6)
[証明] (O5)より となるので成り立ちます。
とおきます。、 となるので となります。よって となります。[証明終わり]
に対して
と定義すると が前順序であることから は前順序となります。定義と(O4)より
- (O7)
が成り立ちます。(O3)、(O7)より
- (O8)
が成り立ちます。
をとり とおきます。
(帰納法) となるので に関する条件 が
を満たすならば任意の に対して が成り立ちます。
写像の分類
以下の条件を考えます。
- 任意の に対して
- 任意の に対して
- 上で は単射
- 上で は全順序
- は無限集合
これらの条件により以下の表のようにタイプ から に分類することができます。
タイプ | 図式 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||
○ | ○ | × | × | × | ||
○ | × | ○ | × | × | ||
× | ○ | × | ○ | × | ||
× | × | ○ | ○ | × |
この表は「○」のところは成り立ち、「×」のところは成り立たないことを表しています。「図式」のところは各タイプの意味を表すものが書かれています。タイプ が自然数を表すものとなります。この表が成り立つことを次回以降示していきたいのですが、この表は自然数の定義となるものなので、自然数を使わない形で示していく予定です。
- 作者:内田 伏一
- 発売日: 2020/03/14
- メディア: 単行本
新版 集合と位相 そのまま使える答えの書き方 (KS理工学専門書)
- 発売日: 2016/05/24
- メディア: 単行本