写像の性質の続き
前回の議論では足りないところがあるので追加していきます。証明はまとめることができると思うのですが、できませんでした。集合論の中の自然数論のような話題だと思うので、まとめて書かれているところがあると思うのですが、見つけることはできませんでしたので必要と思われるものを書いていきます。
全射・単射
を集合、
を写像とします。任意の
に対して
ならば
であるとき、
を単射と呼びます。任意の
に対して
となる
が存在するとき、
を全射と呼びます。
が全射かつ単射であるとき全単射と呼びます。
に対して
を
とおきます(
は
の部分集合全体の集合)。
- (MP1)
- (MP2)
- (MP3)
となります。ここで は
の元の個数を表します。ここでは
、
、
以上の場合に分けるためにこの記法を使います。(後で自然数を定義するので自然数の全体は使いません)
逆写像
が全単射であるとき、任意の
に対して
の元の個数が
なので、
に
の元を対応させる写像
を定義することができます。
任意の に対して
となるので
は
の恒等写像となります。
任意の に対して
となるので
であることから は
の恒等写像となります。
を
の逆写像と呼びます。
以上の議論から
集合 に対して全単射
が存在するとき
と表し、
と
は濃度が等しいといいます。上の議論より
は同値関係となります。
全射・単射の性質
を単射、
は
を満たす写像とします。
とすると
となり、
は単射なので
となります。よって
となります。よって
を全射、
は
を満たす写像とします。
とすると
は全射なので
となる
が存在します。
となり、
となります。よって
となります。よって
、
に対して
- (MP7)
、
が単射ならば
は単射
- [証明]
- [証明]
- (MP8)
が単射ならば
は単射
- [証明]
- [証明]
- (MP9)
、
が全射ならば
は全射
- [証明]
- [証明]
- (MP10)
が全射ならば
は全射
- [証明]
- [証明]
- (MP11)
が単射、
が全単射ならば
は単射
- [証明]
- [証明]
- (MP12)
が全射、
が全単射ならば
は全射
- [証明]
- [証明]
に対して
(
の像)とすると、全射
、
が存在します。
(
に関する同値類全体の集合)とすると、単射
、
が存在します。
を
のとき
とすると
有限集合
上の議論より集合 に対して以下の条件(FS1)、(FS2)は同値となります。これらの条件が成り立つとき、
を有限集合と呼びます。有限集合でないとき無限集合と呼びます。
(FM1)
が有限集合、
が単射ならば、
は有限集合となります。
[証明] を単射とします。
とすると
は空ではないので、その一つの元をとる写像を
とします。
を
から
への写像と見たものを
とすると、
は
の恒等写像となります。よって
は単射となり、
は単射となります。
(FM2)
が有限集合、
が全射ならば、
は有限集合となります。
[証明] を単射とします。
とすると
は空ではないので、その一つの元をとる写像を
とします。
は単射となり、
を
から
への写像と見たものを
とすると、
は全単射となります。よって
は単射となります。
(FM3)
が有限集合ならば
の任意の部分集合は有限集合となります。
[証明] (FM1)より成り立ちます。[証明終わり]
(FM4)
が有限集合ならば
の任意の同値類全体の集合は有限集合となります。
[証明] (FM2)より成り立ちます。[証明終わり]
(FM5)
が有限集合、
と
は濃度が等しいならば
は有限集合となります。
これは明らかに成り立ちます。
(FM6)
、
が有限集合、
ならば
は有限集合となります。
[証明] ならば
は有限集合となります。
とします。
を単射とします。
とすると
の
への制限は
から
への単射となり、
が有限集合であることから全射となります。
は単射なので
となって
となります。よって
は全射となります。
とします。
は単射なので
となります。
は単射なので
となる
がただ一つ存在します。また、
は単射なので
となります。
を
、
のとき
と定義することができ、
は単射となります。
が有限集合であることから
は全射となります。
任意の に対して
ならば
となる
が存在します。よって
は全射となり、
は有限集合となります。[証明終わり]

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