エレファント・コンピューティング調査報告

極限に関する順序を論理プログラミングの手法を使って指定することを目指すブロクです。

群論の計算(27)

体と自己同型写像(1)

ここからは『ガロア理論の頂を踏む』に従って証明を見ていき、体上の代数の同型を使って証明が書けるところは書いていきたいと思います。前に書いた証明と同じ内容になってしまう場合もあります。

定理 5.1

 \sigma が体  K から体  K' への同型写像であり、 K K' \mathbb{Q} を含むとき  q \in \mathbb{Q} に対して  \sigma(q) = q が成り立ちます。

[証明]
 \sigma(0) = 0 \sigma(1) = 1 が成り立ちます。

 n \in \mathbb{N} n = \underbrace{1+1+\cdots+1}_{n} であるから
 \sigma(n) = \sigma(\underbrace{1+1+\cdots+1}_{n}) = \underbrace{\sigma(1)+\sigma(1)+\cdots+\sigma(1)}_{n} = \underbrace{1+1+\cdots+1}_{n} = n
が成り立ちます。
 \sigma(n) + \sigma(-n) = \sigma(n + (-n)) = \sigma(0) = 0
であることから  \sigma(-n) = -\sigma(n) = -n が成り立ちます。よって任意の  n \in \mathbb{Z} に対して  \sigma(n) = n が成り立ちます。

 n \in \mathbb{Z} \setminus 0 のとき
 \sigma(n) \sigma(\frac{1}{n}) = \sigma(n \frac{1}{n}) = \sigma(1) = 1
であることから  \sigma(\frac{1}{n}) = \frac{1}{\sigma(n)} = \frac{1}{n} が成り立ちます。 m \in \mathbb{Z} n \in \mathbb{Z} \setminus 0 のとき
 \sigma(\frac{m}{n}) = \sigma(m \frac{1}{n}) = \sigma(m) \sigma(\frac{1}{n}) = m \frac{1}{n} = \frac{m}{n}
が成り立ちます。よって任意の  q \in \mathbb{Q} に対して  \sigma(q) = q が成り立ちます。[証明終わり]

 K \mathbb{Q} を含む体とします。 \alpha \in K に対して  \sigma_\alpha :  \mathbb{Q}[X] \to \mathbb{Q} \mathbb{Q} 上の代数の準同型で  \sigma_\alpha (X) = \alpha であるものとするとき  \operatorname{Ker} \sigma_\alpha の元の中で次数が最小(で最高次の係数  a a = 1 )であるものを  \alpha \mathbb{Q} 上の最小多項式と呼びます。以下の定理の中では  a = 1 でなくてもよいものとします(定義がいろいろあるようです)。 \operatorname{Im} \sigma_\alpha は体  K の部分環(部分代数)であるので整域となります。 \mathbb{Q}[X] / \operatorname{Ker} \sigma_\alpha \cong \operatorname{Im} \sigma_\alphaなので  \operatorname{Ker} \sigma_\alpha \mathbb{Q}[X] の素イデアルとなります。

定理 5.2

 f \in \mathbb{Q}[X] ( f \ne 0)が  f(\alpha) = 0 であるとき
 f \mathbb{Q} 上の既約多項式である。 \iff  f \alpha \mathbb{Q} 上の最小多項式である。

[証明]  A = \operatorname{Ker} \sigma_\alpha とおきます。

(  \Rightarrow )  f \mathbb{Q} 上の既約多項式 f \in A とします。 (f) \mathbb{Q}[X] の極大イデアル A \ne \mathbb{Q}[X] (たとえば  h = 1 h \notin A)であるから  (f) = A となります。

 g \in A に対して  g = fh となる  h \in \mathbb{Q}[X] が存在します。 \deg g \ge \deg f となります。よって  f の次数は最小となり、 f \alpha \mathbb{Q} 上の最小多項式となります。

(  \Leftarrow )  f \alpha \mathbb{Q} 上の最小多項式であるとします。

 \mathbb{Q}[X] は単項イデアル整域なので  A = (p) となる  p \in \mathbb{Q}[X] が存在します。 f \in (p) なので  f = pq となる  q \in \mathbb{Q}[X] が存在します。 \deg f \le \deg p より  \deg q = 0 となり  (f) = (p) = A となります。

 f = gh \ (g, h \in \mathbb{Q}[X]) とすると  A = (f) \mathbb{Q} の素イデアルなので  g \in A または  h \in A となります。 g \in A とすると  (g) = (f) (h) = (1) となります。同様に  h \in A とすると  (h) = (f) (g) = (1) となります。よって  f は既約多項式となります。[証明終わり]

定理 5.3

 \alpha \in K \mathbb{Q} 上の最小多項式 n 次式  f であるとすると
 \mathbb{Q}(\alpha) = \{ a_{n-1}\alpha^{n-1} + \cdots + a_{1}\alpha + a_0  \ | \ a_i \in \mathbb{Q} \ ( 0 \le i \le n-1 ) \}
は体になり、元の表し方は1通りとなります。

[証明] 上の定理の証明より  \operatorname{Ker} \sigma_\alpha = (f) f は既約多項式となります。 \mathbb{Q}[X] は単項イデアル整域なので  \mathbb{Q}[X]イデアル (g) ( g \in \mathbb{Q}[X]) と表すことができます。 (f) \subseteq (g) \subseteq \mathbb{Q}[X] とすると  f = gh となる  h \in \mathbb{Q}[X] が存在します。 f は既約多項式なので  (f) = (g) または  (g) = (1) となり  \operatorname{Ker} \sigma_\alpha = (f) \mathbb{Q}[X] の極大イデアルとなります。

 \mathbb{Q}[X] / \operatorname{Ker} \sigma_\alpha \cong \operatorname{Im} \sigma_\alpha より  K の部分代数  \operatorname{Im} \sigma_\alpha = \mathbb{Q}[\alpha] は体となります。 \mathbb{Q}(\alpha) \mathbb{Q}[\alpha] の商体とすると  \mathbb{Q}(\alpha) = \mathbb{Q}[\alpha] となります。

以下は以前書いた証明と同様となります。

 A = \{ a_{n-1}\alpha^{n-1} + \cdots + a_{1}\alpha + a_0  \ | \ a_i \in \mathbb{Q} \ ( 0 \le i \le n-1 ) \} とおきます。 A \subseteq \mathbb{Q}(\alpha) となります。 k = \mathbb{Q} とおきます。

 g \in k[X]  f で割った余りを  r \in k[X] とすると  g - r \in (f) r = 0 または  \deg r \lt n となります。 \sigma_\alpha(g) = \sigma_\alpha(r) \in  k + k \alpha + \cdots + k \alpha^{n-1} = A となります。よって  \mathbb{Q}(\alpha) = \operatorname{Im} \sigma_\alpha \subseteq A となります。

 a_0 + a_1 \alpha + \cdots a_{n-1} \alpha^{n-1} = 0 ( a_0, a_1, \cdots , a_{n-1} \in k) とすると  h = a_0 + a_1 X + \cdots a_{n-1} X^{n-1} とおくと  h \in (f) となります。 f n 次式なので  h = 0 となって  a_0 = a_1 = \cdots = a_{n-1} = 0 となります。よって  \{ 1, \alpha, \cdots , \alpha^{n-1} \} k 上1次独立となり  k[\alpha] k 上の基底となります。よって  a_0 + a_1 \alpha + \cdots a_{n-1} \alpha^{n-1} という表し方は一意的となります。[証明終わり]

次の定理が後の議論と関係しているので、前に戻って次の定理を書いておきます。

定理 3.6

 p \in \mathbb{Q}[X] を既約多項式とします。

  1.  f \in \mathbb{Q}[X] p で割り切れないとき、 f p \mathbb{Q} 上で互いに素となります。
  2.  f, g \in \mathbb{Q}[X] fg p で割り切れるとき、 f p で割り切れるか、 g p で割り切れるか、どちらかが成り立ちます。
  3.  p f \in \mathbb{Q}[X] が共通の根を1つでも持てば、 f p で割り切れます。
  4.  f \in \mathbb{Q}[X] の次数が1次以上、 p の次数未満のとき、 p f は共通の根を持ちません。
  5.  p は重根を持ちません。

[証明]
1.  \mathbb{Q}[X] は単項イデアル整域なので  \mathbb{Q}[X]イデアル (g) ( g \in \mathbb{Q}[X]) と表すことができます。 (p) \subseteq (g) \subseteq \mathbb{Q}[X] とすると  p = gh となる  h \in \mathbb{Q}[X] が存在します。 p は既約多項式なので  (p) = (g) または  (g) = (1) となり  (p) \mathbb{Q}[X] の極大イデアルとなります。(単項イデアル整域の既約元で生成されるイデアルは極大イデアル)

 f \in \mathbb{Q}[X] とすると、 (p) \subseteq (p, f) なので  f \in (p) または  (p, f) = (1) となります。 f \notin (p) とすると  (p, f) = (1) となります。

2.  f, g \in \mathbb{Q}[X] fg \in (p) とします。(1) より  f \notin (p) とすると  (p, f) = (1) となります。 pq + fr = 1 となる  q, r \in \mathbb{Q}[X] が存在します。 g = pqg + fgr \in (p) となります。(極大イデアルは素イデアル)

3.  f \in \mathbb{Q}[X] とします。(1) より  f \notin (p) とすると  (p, f) = (1) となります。 pq + fr = 1 となる  q, r \in \mathbb{Q}[X] が存在します。 \alpha \in K p(\alpha) = f(\alpha) = 0 とすると   1 = p(\alpha)q(\alpha) + f(\alpha)r(\alpha) = 0 となって矛盾。よって  f \in (p) となります。

4.  f \in \mathbb{Q}[X] f \ne 0 1 \le \deg f \lt \deg p とします。(3) より  p f が共通の根を持てば  f \in (p) となります。 f \ne 0 なので  \deg f \ge \deg p となって矛盾。よって  p f は共通の根を持ちません。

5.  \displaystyle f=\sum _{i=0}^{n}a_{i}X^{i} \in K[X] に対して  \displaystyle f'=\sum _{i=1}^{n}ia_{i}X^{i-1} \in K[X] ( f の導多項式) を作ることを微分と言います。 (fg)' = f'g + fg' が成り立ちます。

 p が重根を持つと仮定します。 p = (X-\alpha)^2 q \alpha \in K q \in K[X] とします。 p' = 2(X-\alpha) q + (X-\alpha)^2 q' が成り立ちます。 p p' は共通の根  \alpha を持ちます。一方、 1 \le \deg p' \lt \deg p となるので (4) より  p f は共通の根を持たないので矛盾となります。よって  p は重根を持ちません。[証明終わり]

定理 5.8

 \sigma を体  K から体  K' への同型写像とします。 f \in \mathbb{Q}[X] \mathbb{Q} 上の  n 次既約多項式とします。 f の根のすべてを  \alpha_1, \alpha_2, \cdots , \alpha_n \in K とすると  \sigma(\alpha_1), \sigma(\alpha_2), \cdots , \sigma(\alpha_n)  \alpha_1, \alpha_2, \cdots , \alpha_n を入れ替えたものとなります。

[証明]  \sigma \mathbb{Q} 上では恒等写像となるので  \sigma \mathbb{Q} 上の代数の同型となります。

 f = a_n X^n + a_{n-1} X^{n-1} + \cdots + a_1 X + a_0 \alpha \in K とおくと
 \begin{eqnarray*}
\sigma(f(\alpha)) & = & \sigma( a_n \alpha^n + a_{n-1} \alpha^{n-1} + \cdots + a_1 \alpha + a_0) \\
 & = & a_n \sigma( \alpha )^n + a_{n-1} \sigma( \alpha )^{n-1} + \cdots + a_1 \sigma( \alpha ) + a_0 \\
 & = & f(\sigma(\alpha))
\end{eqnarray*}
となって  f(\alpha) = 0 のとき  f(\sigma(\alpha)) = \sigma(f(\alpha)) = 0 となります。

 A = \{ \alpha_1, \alpha_2, \cdots , \alpha_n \} とおくと  \sigma(A) \subseteq A となります。 \sigma全単射なので  \sigma A への制限は全単射となります。

この定理の主張はこれだけですが、定理 3.6 (5) から  \alpha_1, \alpha_2, \cdots , \alpha_n はすべて異なることがわかります。[証明終わり]

定理 5.9

 f \in \mathbb{Q}[X] \mathbb{Q} 上の  n 次既約多項式 \alpha, \beta \in K f の異なる根であるとすると  \sigma(\alpha) = \beta を満たす  \mathbb{Q}(\alpha) から  \mathbb{Q}(\beta) への同型写像  \sigma が存在します。

[証明]  \psi_\alpha , \psi_\beta : \mathbb{Q}[X] \to K \mathbb{Q} 上の代数の準同型で  \psi_\alpha(X) = \alpha \psi_\beta(X) = \beta を満たすものとします。

 f は既約多項式なので  \alpha の最小多項式かつ  \beta の最小多項式となるので  \psi_\alpha^{-1}(0) = \psi_\beta^{-1}(0) = (f) となって  \psi_\beta(\psi_\alpha^{-1}(0)) = \psi_\beta( (f) ) = \{ 0 \} となります。

 x, y \in \mathbb{Q}[\alpha] に対して  x' \in \psi_\beta(\psi_\alpha^{-1}(x)) y' \in \psi_\beta(\psi_\alpha^{-1}(y)) をとると  x = y ならば  x' - y'  \in \psi_\beta(\psi_\alpha^{-1}(0)) = \{ 0 \} となって  x' = y' となります。 \sigma : \mathbb{Q}[\alpha] \to \mathbb{Q}[\beta]  x \in \mathbb{Q}[\alpha] に対して  \sigma(x) \in \psi_\beta(\psi_\alpha^{-1}(x)) として定義することができ、全単射となって  \psi_\alpha \psi_\beta は準同型なので  \sigma は同型となります。

 X \in \psi_\alpha^{-1}(\alpha) であるから  \beta \in \psi_\beta(\psi_\alpha^{-1}(\alpha)) となって  \sigma(\alpha) = \beta となります。[証明終わり]

定理 5.10

 f \in \mathbb{Q}[X] \mathbb{Q} 上の  n 次既約多項式 f の根のすべてを  \alpha_1 = \alpha, \alpha_2, \cdots , \alpha_n とします。このとき  \mathbb{Q}(\alpha) に作用する同型写像 n 個あり、それらは  \sigma_i(\alpha) = \alpha_i (i = 1, 2, \cdots , n) で定められ、 \sigma_i \mathbb{Q}(\alpha) から  \mathbb{Q}(\alpha_i) への同型写像となります。

[証明] 定理 5.9 より  \mathbb{Q} 上の代数の同型  \sigma_i : \mathbb{Q}(\alpha) \to \mathbb{Q}(\alpha_i) が存在します。 \sigma_i \sigma_i(\alpha) が決まれば決まるのでこのような同型は一意的となります。

定理 5.8 より  \sigma(\alpha) \alpha_1, \alpha_2, \cdots , \alpha_n \in K のどれかになるので同型の個数は  n 個となり主張が成り立ちます。[証明終わり]

定理 5.17

 \mathbb{Q}(\alpha) に作用する同型写像  \sigma について、 \sigma(\alpha) \mathbb{Q}(\alpha) に含まれるとき  \sigma \mathbb{Q}(\alpha) の自己同型写像になります。

[証明]  \sigma( \mathbb{Q}(\alpha) )  \sigma(\alpha) 含む最小の部分代数なので  \sigma( \mathbb{Q}(\alpha) ) \subseteq \mathbb{Q}(\alpha) となります。 \sigma は同型なので  \mathbb{Q}(\alpha) の自己同型写像になります。[証明終わり]