コーシーの積分定理の証明
「複素関数概論」に従ってコーシーの積分定理の証明を見ていきたいと思います。
補題 3.1'
を実軸または虚軸に平行な辺からなる長方形の周とし、複素関数 をその長方形の周と内部を含む開集合で微分可能とすると
[証明] を を頂点とする長方形の周、 はこの長方形の周と長方形の内部を含む開集合で微分可能とします。
を を頂点とする長方形とすると となります。 のうち が最大のものを とすると となります。
これを繰り返して を作ります。
の頂点を とします。
を を頂点とする長方形とすると となります。 のうち が最大のものを とすると となります。
に対して
となります。これに対応する長方形の周と内部を とすると は有界閉集合で を満たすので となります。 をとります。
は微分可能なので任意の に対して が存在して
が成り立ちます。 は の多項式なので
となります。
の長さを 、 の長さを とおきます。 が 上の点ならば より が成り立ちます。
となり
となって は任意より が成り立ちます。[証明終わり]
補題 3.2'
複素関数 を単連結領域 で微分可能で、閉曲線 が 内の実軸または虚軸に平行な線分からなる折れ線から成っているならば
[証明] が線分 からなるとし、 は実軸に平行な直線と虚軸に平行な直線 に含まれているとします。 の内部を で分割すると長方形( を周とします)に分割することができます。よって が成り立ちます。[証明終わり]
不定積分
を領域 上の連続な複素関数とします。 内の積分路 に対して、積分 の値が の始点 と終点 が固定されれば途中の道 によらずに一定値をとるとき、この積分を で表します。このとき関数 を の不定積分と言います。
定理 3.4'
を領域 上の連続な複素関数とすると以下の条件は同値となります。
- (a) は 上で不定積分を持つ。このとき不定積分は で正則。
- (b) 上に正則関数 で となるものが存在する。
- (c) 内の任意の閉じた道 に対して
- (c') 内の実軸または虚軸に平行な線分からなる折れ線からなる任意の閉じた道 に対して
[証明] (c) (a)
(c) より閉じた道 に対して が成り立ちます。
を始点、 を終点とする 内の2つの道 に対して に続けて をたどる曲線を とすると は閉じた道になります。よって
となります。
ここで を を始点、 を終点とする 内の任意の道として考えると、積分 は の始点 と終点 とで一意に定まり、道 の途中の通り方にはよらないことがわかります。よって (a) が成り立ちます。
(c') (b)
、 を を始点、 を終点とする実軸または虚軸に平行な線分からなる折れ線とすると、(c) (a) の証明と同様に、(c') の条件より が成り立ちます。 を を始点、 を終点とする実軸または虚軸に平行な線分からなる折れ線とし、 とおきます。
は連続なので任意の に対して適当な をとると
とすることができます。この は開円板 が となるようにとることができます。
、 を とすると が の点ならば となるので が成り立ちます。
より
となって とすれば となります。
(b) (c)
(b) より を 内の任意の閉じた道として、 の始点を をすると は の終点にもなります。よって命題 (E) により
となるので (c) が成り立ちます。
(a) (b) は (c') (b) の後半で とおけば成り立ちます。[証明終わり]