対称式の基本定理・証明1・一般の場合
次に、一般の場合について証明します。その前に、基本対称式の定義をもう一度書いておきます。
基本対称式
変数の多項式
は対称式となります()。これらの対称式を基本対称式といいます。のときはとが基本対称式となります。のときはととが基本対称式となります。
対称式の基本定理
[定理]
対称式は基本対称式の多項式となります。
[証明]
を対称式とします。 は という形の式の和の形で書くことができます。 この という形の式を単項式といいます。 の中に(和の成分として)含まれている単項式を項ということにします。
の中にとという項があるとすると、これらの項をまとめてとすることができます。 よってに含まれる項は、、…、のどれかが異なるようにすることができます。 多項式をこの形に書き直したときのに含まれる項全体の集合をとします。
を次の対称群(集合の置換(集合からそれ自身への全単射)全体の集合)の元とすると、 単項式に単項式を対応させる写像を定義することができます。 この(単項式全体の集合からそれ自身への)写像もと書くことにします。 このような写像を の置換ということにします。
の元をとります。 を の置換とすると、 は対称式なので もの元となります。 に対して、 のすべての置換によってできる(の中の異なるもの)全体の集合をとすると、 はに含まれます。
単項式全体の集合に以下のように順序を定義します。 単項式とがであることを、ある()に対してかつとなることと定義します。またはのときと定義します。 この順序は全順序となります。
は空ではないとして、順序に関して最大となるの元をとります。
の中での次数が最大の元は
の元となります。この中での次数が最大の元は
の元となります。 これを繰り返すとの中で順序に関して最大となる元は
となります。 よってはを含み、
の中で順序に関して最大となる元をとするととなります。
よって
とおくと順序に関するの最大の元はとなります。 ここで、もしが基本対称式の多項式であるとすると、も基本対称式の多項式となります。 よって、が基本対称式の多項式であることを証明すればよいということになります。
からを作ったのと同じ方法で、から、から、と順に作っていくと、どこかのでとなるか、または順序に関して最大となる元のの次数はとなります。すなわちは定数となるので、基本対称式の多項式となります。 したがって元のも基本対称式の多項式となるということがわかります。
[証明終わり]