エレファント・ビジュアライザー調査記録

ビジュアルプログラミングで数式の変形を表すことを考えていくブロクです。

エレファントな整数論(5)

自然数の乗法

乗法  \cdot

  •  a \cdot 0 = 0
  •  a \cdot (b+1) = (a \cdot b) + a

帰納的に定義します。乗法の演算子を省略して  a \cdot b ab と書くことができるものとします。乗法は加法に優先するとしてかっこを省略することができるものとします。

  •  0 \cdot 0 = 0
  •  0 \cdot b = 0 のとき  0 \cdot (b + 1) = 0 \cdot b + 0 = 0 + 0 = 0

となるので、帰納法により

  • (M1) 任意の  b \in \mathbb{N} に対して  0 \cdot b = 0

が成り立ちます。

  •  1 \cdot 0 = 0
  •  1 \cdot b = b のとき  1 \cdot (b + 1) = 1 \cdot b + 1 = b + 1

となるので、帰納法により

  • (M2) 任意の  b \in \mathbb{N} に対して  1 \cdot b = b

が成り立ちます。

(M2)と  a \cdot 1 = a \cdot (0+1) = (a \cdot 0) + a = 0 + a = a により

  • (M3) 任意の  a \in \mathbb{N} に対して  a \cdot 1 = 1 \cdot a = a

となり  1 は乗法の単位元となります。

  •  (a + b) \cdot 0 = 0 = 0 + 0 = a \cdot 0 + b \cdot 0
  •  (a + b)c = ac + bc のとき  (a + b)(c + 1) = (a + b)c + a + b = ac + bc + a + b = a(c + 1) + b(c + 1)

となるので、帰納法により

  • (M4) 任意の  a, b, c \in \mathbb{N} に対して  (a + b)c = ac + bc

が成り立ちます。

  •  a \cdot 1 = 1 \cdot a = a
  •  ab = ba のとき  a(b + 1) = ab + a = ba + a = (b + 1)a

となるので、帰納法により

  • (M5) 任意の  a, b \in \mathbb{N} に対して  ab = ba

が成り立ちます。

(M4)、(M5)より

  • (M6) 任意の  a, b, c \in \mathbb{N} に対して  a(b + c) = ab + ac

が成り立ちます。

  •  (ab) \cdot 0 = 0
  •  (ab)c = a(bc) のとき  (ab)(c + 1) = (ab)c + ab = a(bc) + ab = a(bc + b) = a (b(c + 1))

となるので、帰納法により

  • (M7) 任意の  a, b, c \in \mathbb{N} に対して  (ab)c = a(bc)

が成り立ちます。

(M1)、(M2)、(M4)、(M5)、(M7)の計算を書き直すと

  • (M1)  0 \cdot b = 0(b - 1) = 0(b - 2) = \cdots = 0(b - b) = 0 \cdot 0 = 0
  • (M2)  1 \cdot b =  1b + 0 = 1(b - 1) + 1 = 1(b - 2) + 2 = \cdots = 1(b - b) + b = 1 \cdot 0 + b = b
  • (M4)  (a + b)c = (a + b)c + a0 + b0 = (a + b)(c - 1) + a1 + b1 = (a + b)(c - 2) + a2 + b2  \\ = \cdots = (a + b)(c - c) + ac + bc = ac + bc
  • (M5)  ab = ab + 0a = a(b - 1) + 1a = a(b - 2) + 2a = \cdots = a(b - b) + ba = ba
  • (M7)  (ab)c + a(bd) = (ab)(c - 1) + ab + a(bd) = (ab)(c - 1) + a(b + bd) = (ab)(c - 1) + a(b(1 + d)) より  (ab)c = (ab)(c - 1) + a(b1) = (ab)(c - 2) + a(b2) = \cdots = (ab)(c - c) + a(bc) = a(bc)

のようになります。

 \mathbb{N}

  • 加法  + に関して可換なモノイドとなり、
  • 乗法  \cdot に関しても可換なモノイドとなり(M3、M5、M7)、
  • 乗法は加法に対して分配法則を満たします(M4、M6)。

よって  \mathbb{N} は(自明ではない)単位元を持つ可換な半環となります。

エレファントな整数論(4)

前回の議論を整数に対応するように書き直していきます。

整数の順序による表記

順序集合  A の部分集合  X に対して、任意の  x \in X に対して  a \le x であるような  a \in A が存在するとき  X は下に有界、任意の  x \in X に対して  a \ge x であるような  a \in A が存在するとき  X は上に有界であると言います。

 Z \ne \varnothing を順序集合で

  • (Z3)  \varnothing \ne X \subseteq Z かつ  X は下に有界ならば   X は最小元を持つ

とします。 x, y \in Z とすると  \{ x, y \} が最小元を持つので  Z は全順序集合となります。

 Z は整数全体を表すものですが、前回と同様ここでは整数の定義とは考えません。整数の定義は後で行います。

さらに

  • (Z4)  Z は上に有界ではない

とします。すると  s: Z \to Z

  •  s(x) = \min \{ y \in Z \mid x < y \}

と定義することができます( \min S S の最小元を表します)。 x < s(x) となります。

 x < y ならば  s(x) \le y < s(y) となります。同様に  y < x ならば  s(y) \le x < s(x) となります。よって

  • (Z5)  s(x) = s(y) \iff x = y

となります。

  • (Z6)  x \in Z ならば  s(y) = x となる  y \in Z が存在する

とします。(Z5)より  x y を対応させる写像  s^{-1} を定義することができて、 s^{-1} s の逆写像となります。

 z \in Z とします。 N = \{ x \in Z \mid z \le x \} とおきます(これは自然数全体を表すものとなります)。

前回の議論より

  • (N1)  X \subseteq N が以下の条件を満たすならば  X = N
    •  0 \in X
    •  x \in X \implies s(x) \in X

が成り立ちます。

 R \subseteq N \times A

  •  (z, a) \in R を満たす  a \in A が存在し、
  •  (x, a) \in R ならば  (s(x), b) \in R を満たす  b \in A が存在する

ような集合とすると、
 X = \{ x \in N \mid (x, a) \in R \ となる\ a \in A  \ が存在する \}
は(N1)の  X の条件を満たすので  X = N となります。よって
 (x, a), (x, b) \in R \implies a = b
ならば  R によって  (x, a) \in R のとき  f(x) = a とすると写像  f: N \to A を定義することができます(帰納的定義)。

自然数の定義

 G Z から  Z への全単射全体の集合、 0 \in G Z の恒等写像とします。 G写像の合成に関して群となり、 0単位元となります。 G の演算を  + と書くことにします。 \mathbb{Z} s で生成された  G の部分群、 \mathbb{N} s で生成された  G の部分モノイドとします。 \mathbb{Z} はアーベル群、 \mathbb{N} は可換なモノイドとなります。 s 1 s^{-1} -1 と書きます。(後述)

 f: N \to \mathbb{N}

  •  f(z) = 0
  •  f(s(x)) = 1 + f(x)

帰納的に定義することができます。

 f(x)(z) = x となるので
 x = y \iff f(x) = f(y)
が成り立ちます。よって  \mathbb{N} に順序  \le
 x \le y \iff f(x) \le f(y)
と定義することができ、 \mathbb{N} は(N1)を満たします。

  •  0 + 1 = 1 = 1 + 0
  •  a + 1 = 1 + a のとき  a + 1 + 1 = 1 + a + 1

が成り立つので帰納法により任意の  a \in \mathbb{N} に対して  a + 1 = 1 + a が成り立ちます。

  •  a + 0 = a = 0 + a
  •  a + b = b + a のとき  a + b + 1 = b + a + 1 = b + 1 + a

が成り立つので帰納法により任意の  a, b \in \mathbb{N} に対して  a + b = b + a が成り立ちます。

よって  \mathbb{N} は可換なモノイドとなります。

 a \le b のとき  c = \min \{ x \in \mathbb{N} \mid a + x \le b \} とおくと  a + c \le b < a + c + 1 となるので  a + c = b となります。逆に

  •  a \le a
  •  a \le b のとき  a \le b + 1

より  a + c = b を満たす  c \in \mathbb{N} が存在すれば  a \le b となります。よって
 a \le b \iff a + c = b \ を満たす \ c \in \mathbb{N} \ が存在する
となります。このとき  c = b - a と書きます。

エレファントな整数論(3)

いったんできるだけ  \mathbb{N} を使わないように書き直します。これが意味があるかどうかはもう少し進めてみないとわかりません。

自然数帰納的表記

 N を集合、 0 \in N s: N \to N とし、 N
(N1)「  X \subseteq N

  •  0 \in X
  •  x \in X \implies s(x) \in X

を満たすならば  X = N 」であるとします。

 N = \{ s^n(0) \mid n \in \mathbb{N} \} となるので  s

  •  s^m(0) = s^n(0) \iff m = n

を満たすとすると、 N の順序を

  •  s^m(0) \le s^n(0) \iff m \le n

と定義すると全順序集合になります。

後で自然数の定義をしようとしているので、ここで  \mathbb{N} が出てくるのは良くないのですが、何かの記法がないと書くことができません。そこで  x s 0 回以上有限回適用したもの全体の集合を  s^*(x) と表すことにします。この書き方は自然数の性質を使っているわけではないので許すことにします。

 s^*(x) は(N2)

  • (N2-1)  x \in s^*(x)
  • (N2-2)  y \in s^*(x) \implies s(y) \in s^*(x)
  • (N2-3)  x \notin s^*(s(x))
  • (N2-4)  y \in s^*(x), \ z \in s^*(y) \implies z \in s^*(x)
  • (N2-5)  y \notin s^*(x) \implies x \in s^*(y)

を満たすものとします。

すると(N2-1)、(N2-2) から  s^*(0) は(N1)の  X の条件を満たすので(N1)より  N = s^*(0) となって

  •  x \le y \iff s^*(x) \ni y

と定義すると(N2-1)、(N2-3)、(N2-4)、(N2-5)より

  •  x \le x
  •  x \le y, \ y \le x \implies x = y
  •  x \le y, \ y \le z \implies x \le z
  •  x \not\le y \implies y \le x

となって、 N は順序  \le によって全順序集合になります。

このとき
(N3)  \varnothing \ne X \subseteq N とすると   X は最小元を持ちます。

[証明]  \varnothing \ne X \subseteq N とし

  •  Y = \{ y \in N \mid 任意の \ x \in X \ に対して \ y \le x \}

とおくと

  •  0 \in Y
  •  x \in X が存在し  s(x) \notin Y なので  Y \ne N

よって(N1)より  y \in Y s(y) \notin Y となる  y が存在します。すなわち

  • (1) 任意の  x \in X に対して  y \le x
  • (2) ある  x \in X が存在して  s(y) \not\le x

となる  y が存在します。 N は全順序集合なので (2) より  x < s(y)、よって  x \le y となり、(1) より  y \le x なので  y = x \in X となります。よって (1) より  y X の最小元となります。[証明終わり]

 x \in N x \ne 0 とします。 x = s(y) を満たす  y \in N が存在しないとすると、 N \setminus \{x\} は(N1)の  X の条件を満たすので  X = N となって矛盾。よって

  • (N4)  x \in N x \ne 0 ならば  s(y) = x となる  y \in N が存在します。

自然数の順序による表記

逆に  N \ne \varnothing を順序集合で

  • (N3)  \varnothing \ne X \subseteq N ならば   X は最小元を持つ

とします。 x, y \in N とすると  \{ x, y \} が最小元を持つので  N は全順序集合となります。 s: N \to N

  •  s(x) = \min \{ y \in N \mid x < y \}

と定義します( \min S S の最小元を表します)。 x < s(x) となります。

 x < y ならば  s(x) \le y < s(y) となります。同様に  y < x ならば  s(y) \le x < s(x) となります。よって

  •  s(x) = s(y) \iff x = y

となります。

 N の最小元を  0 とします。

  • (N4)  x \in N x \ne 0 ならば  s(y) = x となる  y \in N が存在する

とします。

このとき(N1)「  X \subseteq N

  •  0 \in X
  •  x \in X \implies s(x) \in X

を満たすならば  X = N 」が成り立ちます。

[証明]  X \subseteq N

  • (1)  0 \in X
  • (2)  x \in X \implies s(x) \in X

を満たす集合とします。  X \ne N とすると  x = \min (N \setminus X) が存在します。 y < x ならば  y \notin N \setminus X、すなわち  y \in X となります。

 x = 0 とすると(1)に反します。 x \ne 0 とすると、(N4)より  s(y) = x となる  y \in N が存在します。 y \in X s(y) \notin X となって(2)に反します。よって  X = N となります。[証明終わり]

 s^*(x) = \{ y \in N \mid x \le y \} とおきます。 s^*(x) s は(N2)

  • (N2-1)  x \in s^*(x)
  • (N2-2)  y \in s^*(x) \implies s(y) \in s^*(x)
  • (N2-3)  x \notin s^*(s(x))
  • (N2-4)  y \in s^*(x), \ z \in s^*(y) \implies z \in s^*(x)
  • (N2-5)  y \notin s^*(x) \implies x \in s^*(y)

を満たします。

 s^*(0) は(N1)の  X の条件を満たすので(N1)より

  •  N = s^*(0)

となります。

エレファントな整数論(2)

自然数帰納的表記

 N を集合、 0 \in N s: N \to N とし、 N
(条件1)「  X \subseteq N

  •  0 \in X
  •  x \in X \implies s(x) \in X

を満たす集合ならば  X = N である」を満たすとします。

このとき  X = \{ s^n(0) \mid n \in \mathbb{N} \} をおくと  X は上の条件を満たすので  X = N となります。よって

  •  N = \{ s^n(0) \mid n \in \mathbb{N} \}

となります。

さらに  s

  • (条件2)  s^m(0) = s^n(0) \iff m = n

を満たすとします。

 N自然数全体を表す集合と考えられます。これは自然数の定義だと考えると  \mathbb{N} が出てくるのはおかしいですが、ここでは数学的帰納法に関する記法を考えることが目的なので今はこのまま議論を進めます。この件は後で検討します。

 N の順序を

  •  s^m(0) \le s^n(0) \iff m \le n

と定義すると全順序集合になります。

このとき
(条件3)  \varnothing \ne X \subseteq N とすると   X は最小元を持ちます。

[証明]  \varnothing \ne X \subseteq N とし

  •  Y = \{ y \in N \mid 任意の \ x \in X \ に対して \ y \le x \}

とおくと

  •  0 \in Y
  •  x \in X が存在し  s(x) \notin Y なので  Y \ne N

よって(条件1)より  y \in Y s(y) \notin Y となる  y が存在します。すなわち

  • (1) 任意の  x \in X に対して  y \le x
  • (2) ある  x \in X が存在して  s(y) \not\le x

となる  y が存在します。 N は全順序集合なので (2) より  x < s(y)、よって  x \le y となり、(1) より  y \le x なので  y = x \in X となります。よって (1) より  y X の最小元となります。[証明終わり]

また、 x \in N x \ne 0 とすると  x = s^n(0) を満たす  n \in \mathbb{N} が存在し、 n \ne 0 なので  x = s(s^{n-1}(0)) となります。よって

  • (条件4)  x \in N x \ne 0 ならば  s(y) = x となる  y \in N が存在します。

自然数の順序による表記

逆に  N \ne \varnothing を順序集合で

  • (条件3)  \varnothing \ne X \subseteq N ならば   X は最小元を持つ

とします。 x, y \in N とすると  \{ x, y \} が最小元を持つので  N は全順序集合となります。 s: N \to N

  •  s(x) = \min \{ y \in N \mid x < y \}

と定義します。 x < s(x) となります。

 x < y ならば  s(x) \le y < s(y) となります。同様に  y < x ならば  s(y) \le x < s(x) となります。よって

  •  s(x) = s(y) \iff x = y

となります。

 N の最小元を  0 とします。

  • (条件4)  x \in N x \ne 0 ならば  s(y) = x となる  y \in N が存在する

とします。

このとき(条件1)「  X \subseteq N

  •  0 \in X
  •  x \in X \implies s(x) \in X

を満たす集合ならば  X = N 」が成り立ちます。

[証明]  X \subseteq N

  • (1)  0 \in X
  • (2)  x \in X \implies s(x) \in X

を満たす集合とします。  X \ne N とすると  x = \min (N \setminus X) が存在します。 y < x ならば  y \notin N \setminus X、すなわち  y \in X となります。

 x = 0 とすると(1)に反します。 x \ne 0 とすると、(条件4)より  s(y) = x となる  y \in N が存在します。 y \in X s(y) \notin X となって(2)に反します。よって  X = N となります。[証明終わり]

(条件1)より

  •  N = \{ s^n(0) \mid n \in \mathbb{N} \}

となります。これも自然数の定義とは考えないとします。

 m < n ならば  s^m(0) < s^n(0) なので

  • (条件2)  s^m(0) = s^n(0) \iff m = n

が成り立ちます。

エレファントな整数論(1)

ここでは「初等整数論入門」に従って素因数分解の一意可能性の定理(以下の定理 5)を数式を使って書く方法について検討してみたいと思います。この定理は「オイラーとリーマンのゼータ関数」でも取り上げられています。このブログの記事「群論の計算(20)」の「一意分解整域」のところでもこの定理の多項式の場合の証明を書いています。これは体の拡大と体上の多項式の対応を考えるときに必要となるものです。この定理は数学のいろいろな初等的な理論に現れるものと考えられます。

「初等整数論入門」では整数の理論として扱われていますが、自然数の理論と考えることもできます。半環や可換な和の記述に使うこともできると考えられます。

「初等整数論入門」では数学的帰納法と同値な条件、または同様に使うことができる条件が書かれています。これらうちのいくつかの条件に基づいて数式を書くことによって、定理 5 の証明を数式で表すことができると考えられます。

これらの関係は以下のように書かれています。
数学的帰納法の公理  \iff 定理 0  \implies 定理 1  \implies 定理 2  \implies 定理 3 ( \implies 系)  \implies 定理 4 ( \implies 系 1  \implies 系 2)  \implies 定理 5
以下にこれらの定理などを引用しておきます。

公理(数学的帰納法の公理)

自然数の集合  A \subseteq \mathbb{N} が2つの条件

  • (1)  1 \in A
  • (2)  n \in A ならば  n+1 \in A

を満たすならば、 A=\mathbb{N} である。

定理 0

自然数の集合  A が空でなければ、最小数を持つ。

定理 1

任意の  a, b \in \mathbb{Z} \ (a>0) に対して

  •  b = qa + r, \ 0 \le r < a

を満たす  q, r \in \mathbb{Z} がただ1組存在する。

定理 2

 \varnothing \ne J \subseteq \mathbb{Z}イデアルなら

  •  J = a \mathbb{Z} \ (a \ge 0)

を満たす  a \in \mathbb{Z} が存在する。

定理 3

 (a, b) = d とするとき

  •  ax + by = c に整数解がある  \iff (c) \subseteq (d) ( c d で割り切れる)

 a, b が互いに素  \iff 1 = ax + by の形に表せる

定理 4

 (a, b) = 1 で、 bc a で割り切れれば、 c a で割り切れる。

系 1

 (a, b) = 1 のとき  [a, b] = ab

系 2

 (a, b)[a, b] = ab

系 3

 p素数のとき、積  bc p で割り切れれば、 b c p で割り切れる。

系 4

 p素数のとき、積  abc \cdots l p で割り切れれば、因数  a, b, c, \cdots, l のうち少なくとも1つは  p で割り切れる。

定理 5 (素因数分解の一意可能性)

正の整数  a は、素数の積

  •  a = p_1p_2 \cdots p_r

に分解される。この分解は、因数の順序を区別しなければ一意的である。

可換環論の勘どころ (数学のかんどころ)

可換環論の勘どころ (数学のかんどころ)

中間報告(4)

このブログは、論理プログラミングに実行順序を指定する機能を追加してサーバーで動作するような無限に動作するプログラムを記述することを一つの目標としています。無限の実行順序を指定するには、個別に指定することはできないので、何かのパターンで指定しなければなりません。これを数式の変形のパターンで指定することがこのブログの目標となっています。これをエレファント・コンピューティングと呼ぶことにします。エレファントとは、四色問題のコンピューターを使った証明がエレガントではなくエレファントと言われたことに由来します。ここでは定義から計算で証明できるような記法を考えていくことを「エレファント化」と呼ぶことにします。

前回の中間報告以降更新したもの

エレファントな関数論

ガロア理論の頂を踏む」の中で代数学の基本定理の証明でリウヴィルの定理の話題が出てきたので、これがうまく書くことができるかどうかを考えていきます。またリーマン予想の説明を書こうとしたときに解析接続が出てきたので、これについてもうまく説明をするための記法を考えていきます。

現在はコーシーの積分定理の証明について調査しています。

代数学のエレファント←声に出して読めなくもない数学

「声に出して読めなくもない数学」は「現代数学のエレファント」に変更しました。このシリーズでは数学のいろいろな理論を「エレファント化」していく予定です。

現在は行列のランクの計算について調べています。行列の行または列を入れ替える操作によって不変であるようなものの記法について、テンソル積を使って書こうとしているのですが、「可換な和」の記法があった方が良いと考えられます。現在はその記法について考えています。

エレファントなポアンカレ予想←論理プログラミング的ポアンカレ予想

ホモロジーホモトピーの計算はエレファントではないだろうか」ということで「論理プログラミング的ポアンカレ予想」は「エレファントなポアンカレ予想」に変更しました。ポアンカレ予想の説明を書くための記法を考えることでエレファント化のヒントが得られるのではないか、ということで始めましたが、現在はホモロジーの計算をやろうとして、そこで止まっています。

論理プログラミング的リーマン予想

リーマン予想の説明を書くための記法を考えることでエレファント化のヒントが得られるのではないか、ということで始めましたが、現在は解析接続の説明を書こうとして、そこで止まっています。

半環上のフラクタル代数

論理プログラミングのデータを半環と考えて、それを環または体に対応させることを考えています。半環に順序を導入して、それを環または体に対応させてその極限を考えることによって実行順序を表すことを目標としています。

現在はPrologの実行順序を説明しようとしています。

前回の中間報告以降更新していないもの

以下は特に進展はありません。

論理プログラミング

「論理プログラミング」と「論理計算と随伴関手」のシリーズでは、ブラウザで行われるような無限に続く入出力を、論理プログラミングを使って極限として記述する方法を考えています。

フラクタル代数言語 Fractal

論理プログラミング言語であるPrologのような言語に、実行順序を指定する機能を追加する方法を考えています。

斜めの線を使わない圏論

このブログでは斜めの線を使った可換図式を書くことができないので、極限を数式の変形で表すことができないかということで始めたものです。極限の前に積について調べたほうが良いのではないか、ということで調べようとしている段階です。

関数プログラミング

論理プログラミングと関数プログラミングを対応させて、関数プログラミングの実行順序について調べようとしているのですが、何もできていません。

群論の計算

代数方程式の冪根による解法の理論で、体上の代数の理論が使われています。この書き方を工夫することで説明がわかりやすくならないかということで始めました。現在は代数方程式の冪根による解法の定理の証明のところまでは書きましたが、説明をわかりやすくする記法ができていないのでそこで止まっています。

今後の予定

関数論、行列の計算のほかいろいろな記法の「エレファント化」を考えていって、論理プログラミングの実行順序の「エレファント化」につなげていきたいと考えています。行列の計算については可換な和の記法を工夫することができるのではないかと考えています。関数論では積分の計算が何かできそうだと思いますができるかどうかはわかりません。そのほか素数の計算についても考えていく予定です。

エレファントな関数論(6)

コーシーの積分定理の証明

 f \alpha = a + ib を中心とする円の内部で微分可能とします。

 f z微分可能とすると、任意の  \varepsilon > 0 に対して  \delta > 0 が存在して
 | \zeta - z | < \delta \implies \left| \cfrac{f(\zeta) - f(z)}{\zeta - z} - \gamma \right| < \varepsilon
が成り立ちます ( \gamma = f'(z) )
 \delta < \cfrac{\varepsilon}{2 | \gamma |} \delta < \cfrac{1}{2} とすると
 | f(\zeta) - f(z) | < \delta ( | \gamma | + \varepsilon ) < \cfrac{1}{2}\varepsilon + \cfrac{1}{2}\varepsilon = \varepsilon
となるので  f z で連続となります。

 \beta = \alpha + \xi + i \eta を通る長方形の積分 C に対して
 \begin{eqnarray*}
\oint_C f(\zeta)d\zeta
 & = & \xi \int_{0}^{1} f(\alpha + \xi t)dt + i\eta \int_{0}^{1} f(\alpha + \xi + i \eta t)dt \\
 & - & \xi \int_{0}^{1} f(\beta - \xi t)dt - i\eta \int_{0}^{1} f(\beta - \xi - i \eta t)dt \\
 & = & \xi \int_{0}^{1} ( f(\alpha + \xi t) - f(\alpha) - \gamma (\alpha + \xi t - \alpha) ) dt \\
 & + & i\eta \int_{0}^{1} ( f(\alpha + \xi + i \eta t) - f(\alpha) - \gamma (\alpha + \xi + i \eta t - \alpha) ) dt \\
 & - & \xi \int_{0}^{1} ( f(\beta - \xi t) - f(\alpha) - \gamma (\beta - \xi t - \alpha) ) dt \\
 & - & i\eta \int_{0}^{1} ( f(\beta - \xi - i \eta t) - f(\alpha) - \gamma (\beta - \xi - i \eta t - \alpha) ) dt \\
 & + & \Gamma + \Delta \\
 \end{eqnarray*}
となります。ここで
 \begin{eqnarray*}
 \Gamma & = & \xi \int_{0}^{1} f(\alpha) dt + i\eta \int_{0}^{1} f(\alpha) dt - \xi \int_{0}^{1} f(\alpha) dt - i\eta \int_{0}^{1} f(\alpha) dt = 0 \\
\end{eqnarray*}
 \begin{eqnarray*}
 \Delta & = & \xi \int_{0}^{1} \gamma (\alpha + \xi t - \alpha) dt + i\eta \int_{0}^{1} \gamma (\alpha + \xi + i \eta t - \alpha) dt \\
 & - & \xi \int_{0}^{1} \gamma (\beta - \xi t - \alpha) dt  - i\eta \int_{0}^{1} \gamma (\beta - \xi - i \eta t - \alpha) dt \\
 & = & \gamma \left( \xi \int_{0}^{1} \xi t dt + i\eta \int_{0}^{1} (\xi + i \eta t) dt 
    - \xi \int_{0}^{1} (\xi + i\eta - \xi t) dt - i\eta \int_{0}^{1} (i\eta - i \eta t) dt \right) \\
 & = & \gamma \int_{0}^{1} (\xi^2 t + i \xi \eta - \eta^2 t - \xi^2 - i \xi \eta + \xi^2 t + \eta^2 - \eta^2 t) dt \\
 & = & \gamma \int_{0}^{1} (2 (\xi^2 - \eta^2) t  - (\xi^2 - \eta^2) ) dt \\
 & = & \gamma  (\xi^2 - \eta^2) \left( \int_{0}^{1} 2 t dt - \int_{0}^{1} dt \right) = \gamma  (\xi^2 - \eta^2) (1 - 1) = 0 \\
\end{eqnarray*}
となります。

 | f(\zeta) - f(\alpha) - \gamma (\zeta - \alpha) | < \delta \varepsilon より
 \begin{eqnarray*}
\left| \oint_C f(\zeta)d\zeta \right|
 & \le & |\xi| \int_{0}^{1} \delta \varepsilon dt + |\eta| \int_{0}^{1} \delta \varepsilon dt 
  + |\xi| \int_{0}^{1} \delta \varepsilon dt + |\eta| \int_{0}^{1} \delta \varepsilon dt \\
 & = & 2(|\xi| + |\eta|) \delta \varepsilon
\end{eqnarray*}

よって  \displaystyle \oint_C f(\zeta)d\zeta = 0 となります。

よって  F(z)
 C_1:\zeta=\alpha + \xi t; 0 \le t \le 1
 C_2:\zeta=\alpha + \xi + i \eta t; 0 \le t \le 1
とするとき
 \begin{eqnarray*}
F(z) & = & \int_{C_1} f(\zeta)d\zeta + \int_{C_2} f(\zeta)d\zeta \\
 & = & \xi \int_{0}^{1} f(\alpha + \xi t)dt + i \eta \int_{0}^{1} f(\alpha + \xi + i \eta t)dt \\
\end{eqnarray*}
と定義することができます。

 F(z+\xi+i\eta) - F(z) = \xi \int_{0}^{1} f(z + \xi t)dt + i\eta \int_{0}^{1} f(z + \xi + i \eta t)dt より
 \begin{eqnarray*}
 & & \left| \cfrac{F(z+\xi+i\eta) - F(z)}{\xi+i\eta} - f(z) \right| \\
 & = & \left| \cfrac{1}{\xi+i\eta} \int_{0}^{1} (\xi (f(z + \xi t) - f(z)) + i\eta (f(z + \xi + i \eta t) - f(z)))dt \right| \\
 & \le & \left| \cfrac{1}{\xi+i\eta} \right| \int_{0}^{1} (|\xi| |f(z + \xi t) - f(z)| + |\eta| |f(z + \xi + i \eta t) - f(z)|) dt \\
 & \le & \left| \cfrac{1}{\xi+i\eta} \right| \int_{0}^{1} (|\xi| \varepsilon + |\eta| \varepsilon) dt \\
 & \le & \cfrac{|\xi|+|\eta|}{|\xi+i\eta|} \varepsilon \\
 & \le & 2 \varepsilon \\
\end{eqnarray*}
となるので  F(z) z微分可能で  F'(z) = f(z) となります。

積分 C: z = z(t) \ (c \le t \le d) z(c) = z(d) = \alpha であるとします。 \varphi(t) = F(z(t)) とおきます。
 \begin{eqnarray*}
\oint_C f(z)dz & = & \int_d^c f(z(t))z'(t)dt = \int_c^d \varphi'(t)dt = \varphi(d) - \varphi(c) \\
 & = & F(z(d)) - F(z(c)) = F(\alpha) - F(\alpha) = 0 \\
\end{eqnarray*}
となります。

これで  z の近傍で  F(z) が存在してこの式が成り立つということがわかりましたが、コーシーの積分定理が成り立つということはこれでは言えないようです。

複素関数概論 (数学基礎コース)

複素関数概論 (数学基礎コース)