エレファント・ビジュアライザー調査記録

ビジュアルプログラミングで数式の変形を表すことを考えていくブロクです。

対称式の基本定理

[定理]

対称式は基本対称式の多項式となります。

[証明]

 f(x_{1},x_{2}, \ldots ,x_{n}) を対称式とします。


 \LARGE t^{n}-s_{1}t^{n-1}+s_{2}t^{n-2}- \ldots +(-1)^{n}s_{n}=(t-x_{1})(t-x_{2}) \ldots (t-x_{n})


はどのような tについても成り立つ等式となります( tを変数とする多項式として等しい)。 この式の左辺を t-x_{1}で割ると、


 \LARGE t^{n}-s_{1}t^{n-1}+s_{2}t^{n-2}- \ldots +(-1)^{n}s_{n}=(t-x_{1})q_{1}(t)+r_{1}


となります。 t=x_{1}を代入すると


 \LARGE x^{n}_{1}-s_{1}x^{n-1}_{1}+s_{2}x^{n-2}_{2}- \ldots +(-1)^{n}s_{n}=r_{1}


となります。


 \LARGE t^{n}-s_{1}t^{n-1}+s_{2}t^{n-2}- \ldots +(-1)^{n}s_{n}=(t-x_{1})(t-x_{2}) \ldots (t-x_{n})


なので  r_{1}=0 q_{1}(t)=(t-x_{2}) \ldots (t-x_{n}) となります。 次に q_{1}(t) t-x_{2}で割ると、


 \LARGE q_{1}(t)=(t-x_{2})q_{2}(t)+r_{2}


となって、同様に  r_{2}=0 q_{2}(t)=(t-x_{3}) \ldots (t-x_{n}) となります。 このように q_{k-1}(t) t-x_{k}で割っていくと、  q_{k-1}(t)=(t-x_{k})q_{k}(t)+r_{k} r_{k}=0 q_{k}(t)=(t-x_{k+1}) \ldots (t-x_{n}) となります。 ここで  r_{k}=x_{k}^{n-k+1}+u_{k} u_{k} x_{k}に関する n-k次以下の式で、 x_{1},x_{2}, \ldots ,x_{k}だけを含むものとなっています。  r_{k}=0より x_{k}^{n-k+1}=-u_{k}となります。 よって  x_{n}=-u_{n} x_{n-1}^{2}=-u_{n-1}、…、  x_{2}^{n-1}=-u_{2} x_{1}^{n}=-u_{1} f(x_{1},x_{2}, \ldots ,x_{n})に順に代入していくと、  x_{1}については n-1次以下、 x_{2}については n-2次以下、…、 x_{n-1}については 1次以下、 x_{n}については 0次以下にすることができます。 よって f(x_{1},x_{2}, \ldots ,x_{n})は各 a_{k} a_{k} \le n-kであるような cx_{1}^{a_{1}}x_{2}^{a_{2}} \ldots x_{n}^{a_{n}}の和となります。 このような x_{1}^{a_{1}}x_{2}^{a_{2}} \ldots x_{n}^{a_{n}}は1次独立となります。


すなわち Lを変数 x_{1},x_{2}, \ldots ,x_{n}の有理関数全体の体、 K x_{1},x_{2}, \ldots ,x_{n}のすべての置換で不変となる Lの元全体からなる体とすると、 L K上のベクトル空間となり、 x_{1}^{a_{1}}x_{2}^{a_{2}} \ldots x_{n}^{a_{n}}( a_{k} \le n-k)はその基底となります。 アルティンの「 ガロア理論入門」では L K上ベクトル空間としての次元に関する議論から、上記の主張を導いています。


ここでは直接導いてみることにします。  \sigma  n次の対称群 S_{n}の元のときに、 cx_{\sigma (1)}^{a_{1}}x_{\sigma (2)}^{a_{2}} \ldots x_{\sigma (n)}^{a_{n}} \sigma \left( cx_{1}^{a_{1}}x_{2}^{a_{2}} \ldots x_{n}^{a_{n}} \right) と書くことにします。  r=n!とおいて、 S_{n}の元を \sigma _{1},\sigma _{2}, \ldots ,\sigma _{r}とします。 各 a_{k} a_{k} \le n-kであるような x_{1}^{a_{1}}x_{2}^{a_{2}} \ldots x_{n}^{a_{n}} u_{1},u_{2}, \ldots u_{r}とします。 このとき n=3のときの証明で見たように


 \left( \begin{array}{ccccc}\sigma _{1}\left( u_{1} \right)  & \sigma _{1}\left( u_{2} \right)  &  \ldots  &  \ldots  & \sigma _{1}\left( u_{r} \right) \\ \sigma _{2}\left( u_{1} \right)  & \sigma _{2}\left( u_{2} \right)  &  \ldots  &  \ldots  & \sigma _{2}\left( u_{r} \right) \\ \ldots  &  \ldots  &  \ldots  &  \ldots  &  \ldots \\ \ldots  &  \ldots  &  \ldots  &  \ldots  &  \ldots \\ \sigma _{r}\left( u_{1} \right)  & \sigma _{r}\left( u_{2} \right)  &  \ldots  &  \ldots  & \sigma _{r}\left( u_{r} \right) \end{array} \right)


正則行列となります。 よって f(x_{1},x_{2}, \ldots ,x_{n})を各 a_{k} a_{k} \le n-kであるような cx_{1}^{a_{1}}x_{2}^{a_{2}} \ldots x_{n}^{a_{n}}の和で書いたものは、 u_{1}=1であるとすると、 u_{1}の係数だけ残って、他の係数は 0になります。  u_{1}の係数は基本対称式の多項式だったので、 f(x_{1},x_{2}, \ldots ,x_{n})は基本対称式の多項式となります。

[証明終わり]