エレファント・ビジュアライザー調査記録

ビジュアルプログラミングで数式の変形を表すことを考えていくブロクです。

群論の計算(31)

体と自己同型写像(5)

前回の定理を体上の代数を使って書き直しました。体上の代数を使ったものは補題としています。内容が重複しているようで少し長くなっています。これは今後改善していきたいと思います。

補題 1

 L を体  K 上の代数、 H L K 上の自己同型の全体  \operatorname{Aut}_K L の群としての有限部分群、 M = L^H = \{ x \in L \ | \ \sigma(x) = x \ ( \forall \sigma \in H ) \} とします。
 a \in L とすると、 h \in M[X] a = a_1, a_2, \cdots , a_n \in L が存在して  L 上の多項式として
 h = (X - a_1) (X - a_2) \cdots (X - a_n)
となります。

[証明]  H = \{ \sigma_1 = 1, \sigma_2, \cdots , \sigma_{m} \} (元の個数は  m 個)とします。
 a_i = \sigma_i(a) ( i = 1, 2, \cdots , n)、 h = (X - a_1) (X - a_2) \cdots (X - a_n) \in L[X] とおくと  h の係数は  a_1, a_2, \cdots , a_n に関する対称式となるので  M の元となって  h \in M[X] となります。
 \varphi : M[X] \to L[X]  X X を代入する  M 上の代数の準同型とすると、この  h \in M[X] に対して  \varphi(h) h L 上の多項式として見たものとなり  \varphi(h) = (X - a_1) (X - a_2) \cdots (X - a_n) となります。[証明終わり]

補題 2

 L を体  K 上の代数、 H L の自己同型の全体  \operatorname{Aut}_K L の群としての有限部分群、 M = L^H = \{ x \in L \ | \ \sigma(x) = x \ ( \forall \sigma \in H ) \} とします。
 a \in L とし、 \psi : M[X] \to L a を代入する  M 上の代数の準同型とします。
 g \in M[X] \psi^{-1}(0) = (g) ならば  g の任意の根は  L に含まれます。

[証明] 補題 1 の  h \in M[X] a = a_1 なので  h(a) = 0 となり、 h \in \psi^{-1}(0) = (g) となります。 h = gq となる  q \in M[X] が存在します。
 \varphi(h) = \varphi(g) \varphi(q) となって
 \varphi(h) = (X - a_1) (X - a_2) \cdots (X - a_n) であることから  \varphi(g) の根  b b \in \{ a_1, a_2, \cdots , a_n \} \subseteq L となり  L に含まれます。 g の根は \varphi(g) の根と同じものなので  L に含まれます。[証明終わり]

定理 5.26 より以下の定理が成り立ちます。

定理 5.27

 \mathbb{Q} を含む体  K 上のある多項式の最小分解体  L は、ある  \theta \in L を用いて  L = K(\theta) と表せます。

定理 5.28

 K \mathbb{Q} を含む体とします。 K 上のある多項式の最小分解体を  Lガロア群を  G とするとき  [ L : K ] = | G | が成り立ちます。

[証明] 定理 5.27 より  L = K(\theta) となる  \theta \in L が存在します。 \theta K 上の最小多項式 g、その次数を  m とします。定理 5.2 より  g は既約多項式となります。定理 3.6 (5) より  g m 個の異なる根  \theta_1 = \theta, \theta_2, \cdots , \theta_m を持ちます。定理 5.10 より  L に作用する同型写像 \sigma_i(\theta) = \theta_i \ (i = 1, 2, \cdots , m) を満たすもので  m 個となります。

 L K 上の多項式  f の最小分解体とします。 f の根を  \alpha_1, \alpha_2, \cdots , \alpha_n とすると  L = K(\alpha_1, \alpha_2, \cdots , \alpha_n) となります。 \theta \alpha_1, \alpha_2, \cdots , \alpha_n多項式 \theta = h(\alpha_1, \alpha_2, \cdots , \alpha_n) と書くことができます。定理 5.6 と同様に  \sigma_i(\theta) = \sigma_i(h(\alpha_1, \alpha_2, \cdots , \alpha_n)) = h(\sigma_i(\alpha_1,) \sigma_i(\alpha_2), \cdots , \sigma_i(\alpha_n)) となります。定理 5.8 より  \sigma_i(\alpha_1,) \sigma_i(\alpha_2), \cdots , \sigma_i(\alpha_n) \alpha_1, \alpha_2, \cdots , \alpha_n を入れ替えたものなので、 \sigma_i(\theta) = \theta_i \ (i = 1, 2, \cdots , m) は最小分解体  L に含まれます。定理 5.17 より  \sigma_i \ (i = 1, 2, \cdots , m) はすべて  L の自己同型写像となります。 G = \operatorname{Gal}(L/K) = \{ \sigma_1, \sigma_2, \cdots , \sigma_m \} となり  |G| = m となります。

一方  \theta K 上の最小多項式  g の次数が  m なので定理 5.3 より  [ L : K ] = m となります。

よって  [ L : K ] = |G| となります。[証明終わり]

この定理の証明と同様の流れで以下の補題が成り立ちます。

補題 3

 K L は体で、 \mathbb{Q} \subseteq K \subseteq L を満たし  L はある  K 上の多項式の最小分解体になっているものとします。 H = \operatorname{Aut}_K L とおくと  K = L^H となります。

[証明] 定理 5.27 より  L = K(\theta) となる  \theta \in L が存在します。 \theta K 上の最小多項式 g、その次数を  m とします。定理 5.2 より  g は既約多項式となります。定理 3.6 (5) より  g m 個の異なる根  \theta_1 = \theta, \theta_2, \cdots , \theta_m を持ちます。定理 5.10 より  L に作用する同型写像 \sigma_i(\theta) = \theta_i \ (i = 1, 2, \cdots , m) を満たすもので  m 個となります。

定理 5.28 より  H = \{ \sigma_1, \sigma_2, \cdots , \sigma_m \} となります。

 x \in L^H \theta_1, \theta_2, \cdots , \theta_m多項式 x = h(\theta_1, \theta_2, \cdots , \theta_m) と書くことができます。定理 5.6 と同様に
 \sigma_i(x) = \sigma_i(h(\theta_1, \theta_2, \cdots , \theta_m)) = h(\sigma_i(\theta_1,) \sigma_i(\theta_2), \cdots , \sigma_i(\theta_m))
となります。

 \displaystyle y = mx = \sum_{i=1}^m \sigma_i(x) = \sum_{i=1}^m h(\sigma_i(\theta_1,) \sigma_i(\theta_2), \cdots , \sigma_i(\theta_m))
 \theta_1, \theta_2, \cdots , \theta_m の対称式となって、対称式の基本定理より基本対称式の多項式となります。 \theta_1, \theta_2, \cdots , \theta_m \theta K 上の最小多項式  g の根なので  \theta_1, \theta_2, \cdots , \theta_m の基本対称式は  K の元となります。よって  y \in K となって  x = \cfrac{y}{m} \in K となります。[証明終わり]

定理 5.30

 K L は体で、 \mathbb{Q} \subseteq K \subseteq L を満たし  L はある  K 上の多項式の最小分解体になっているものとします。 L の任意の元  b をとり、その  K 上の最小多項式 g とします。このとき  g の任意の根は  L に含まれます。

[証明]  H = \operatorname{Aut}_K L とおくと 補題 3 より  K = L^H となります。
 b \in L の最小多項式  g補題 2 の条件を満たすので、 g の任意の根は  L に含まれます。[証明終わり]