体と自己同型写像(5)
前回の定理を体上の代数を使って書き直しました。体上の代数を使ったものは補題としています。内容が重複しているようで少し長くなっています。これは今後改善していきたいと思います。
補題 1
を体
上の代数、
を
の
上の自己同型の全体
の群としての有限部分群、
とします。
とすると、
と
が存在して
上の多項式として
となります。
[証明] (元の個数は
個)とします。
(
)、
とおくと
の係数は
に関する対称式となるので
の元となって
となります。
を
に
を代入する
上の代数の準同型とすると、この
に対して
は
を
上の多項式として見たものとなり
となります。[証明終わり]
補題 2
を体
上の代数、
を
の自己同型の全体
の群としての有限部分群、
とします。
とし、
を
を代入する
上の代数の準同型とします。
が
ならば
の任意の根は
に含まれます。
[証明] 補題 1 の は
なので
となり、
となります。
となる
が存在します。
となって
であることから
の根
は
となり
に含まれます。
の根は
の根と同じものなので
に含まれます。[証明終わり]
定理 5.26 より以下の定理が成り立ちます。
定理 5.27
を含む体
上のある多項式の最小分解体
は、ある
を用いて
と表せます。
定理 5.28
を
を含む体とします。
上のある多項式の最小分解体を
、ガロア群を
とするとき
が成り立ちます。
[証明] 定理 5.27 より となる
が存在します。
の
上の最小多項式を
、その次数を
とします。定理 5.2 より
は既約多項式となります。定理 3.6 (5) より
は
個の異なる根
を持ちます。定理 5.10 より
に作用する同型写像は
を満たすもので
個となります。
は
上の多項式
の最小分解体とします。
の根を
とすると
となります。
は
の多項式で
と書くことができます。定理 5.6 と同様に
となります。定理 5.8 より
は
を入れ替えたものなので、
は最小分解体
に含まれます。定理 5.17 より
はすべて
の自己同型写像となります。
となり
となります。
一方 の
上の最小多項式
の次数が
なので定理 5.3 より
となります。
よって となります。[証明終わり]
この定理の証明と同様の流れで以下の補題が成り立ちます。
補題 3
、
は体で、
を満たし
はある
上の多項式の最小分解体になっているものとします。
とおくと
となります。
[証明] 定理 5.27 より となる
が存在します。
の
上の最小多項式を
、その次数を
とします。定理 5.2 より
は既約多項式となります。定理 3.6 (5) より
は
個の異なる根
を持ちます。定理 5.10 より
に作用する同型写像は
を満たすもので
個となります。
定理 5.28 より となります。
は
の多項式で
と書くことができます。定理 5.6 と同様に
となります。
は の対称式となって、対称式の基本定理より基本対称式の多項式となります。
は
の
上の最小多項式
の根なので
の基本対称式は
の元となります。よって
となって
となります。[証明終わり]