エレファント・ビジュアライザー調査記録

ビジュアルプログラミングで数式の変形を表すことを考えていくブロクです。

群論の計算(32)

体と自己同型写像(6)

次の定理も流れはだいたい同じように見えます。いったん本の通りにやってみます。

定理 5.31

 L \mathbb{Q} 上の方程式  h(x) = 0 の最小分解体とし、 M L \mathbb{Q} の任意の中間体とします。このとき、 L = M(\beta) となる  \beta が存在します。 \beta を解に持つ  M 上の最小多項式 g(x) とすると、 L g(x) = 0 の最小分解体となります。

 g(x) = 0 の解を  \beta_1 = \beta, \beta_2, \cdots , \beta_m とします。 \sigma_i(\beta) = \beta_i (1 \le i \le m) を満たし、 M の元を不変にする  L の自己同型写像  \sigma_i が存在して
 \operatorname{Gal}(L/M) = \{ \sigma_1, \sigma_2, \cdots , \sigma_m \}
  [ L : M ] = | \operatorname{Gal}(L/M) |
が成り立ちます。

また、 G = \operatorname{Gal}(L/\mathbb{Q}) として、  G における  M の固定群を  G^M とすると
 \operatorname{Gal}(L/M) = G^M
が成り立ちます。

[証明]  h の根を  \alpha_1, \alpha_2, \cdots , \alpha_s とすると  L = M(\alpha_1, \alpha_2, \cdots , \alpha_s) となります。定理 2.5、定理 2.6 (定理 2.5、定理 2.6 は  \mathbb{Q} の代わりに  M としても成り立つため) より  L = M(\alpha_1, \alpha_2, \cdots , \alpha_s) = M(\beta) となる  \beta \in L が存在します。定理 5.3 (定理 5.3 は  \mathbb{Q} の代わりに  M としても成り立つため) より  \beta:M 上の最小多項式 g、その次数を  m とすると  [L :M ] = m となります。 L の正規性(定理 5.30)により  L の元  \beta が根となる  M 上の多項式  g \in M[X] の根  \beta_1 = \beta, \beta_2, \cdots , \beta_m はすべて  L に含まれます。 L = M(\beta) \subseteq M(\beta_1, \beta_2, \cdots , \beta_m) \subseteq L ですから、 L = M(\beta_1, \beta_2, \cdots , \beta_m) となり、 L M 上の多項式  g \in M[X] の根の最小分解体となります。

定理 5.7 (定理 5.7 は  \mathbb{Q} の代わりに  M としても成り立つため) より  L に作用する同型写像のうち  M の元を不変にする写像 g の根  \beta を共役な根  \beta_i に写します。 L に作用する同型写像  \sigma_i
 \sigma_i(\beta) = \beta_i \ (1 \le i \le m) を満たし、 M の元を不変にするものは  L = M(\beta) から  M(\beta_i) への同型写像となります。

定理 3.6 (5) (定理 3.6 (5) は  \mathbb{Q} の代わりに  M としても成り立つため) より  g は重根を持たず  \beta_1, \beta_2, \cdots , \beta_m はすべて異なります。 L に作用する同型写像  \sigma_i \ (1 \le i \le m) \sigma_i(\beta) = \beta_i (1 \le i \le m) を満たし、 M の元を不変にするものはちょうど  m 個となります。よって  L の自己同型写像像で  M の元を不変にするものは  m 個以下となります。 L の正規性(定理 5.30)により  \beta_1 = \beta, \beta_2, \cdots , \beta_m はすべて  L に含まれるので  M(\beta_i) \subseteq L = M(\beta) であり  M(\beta) M(\beta_i) の次元が同じなので定理 5.16 より  M(\beta) = M(\beta_i) となります。同型写像  \sigma_i \ (1 \le i \le m) はすべて  L の自己同型写像になります。
 \operatorname{Gal}(L/M) = \{ \sigma_1, \sigma_2, \cdots , \sigma_m \}
 | \operatorname{Gal}(L/M) | = m
  [ L : M ] = | \operatorname{Gal}(L/M) |
が成り立ちます。

 G = \operatorname{Gal}(L/Q) L に作用するすべての自己同型写像からなる群でしたから  G における  M の固定群を  G^M  G の元のうちで  M を固定するすべての自己同型写像からなる群です。一方  \sigma_i \ (1 \le i \le m) M の元を不変にする  L のすべての同型写像なので  G^M \subseteq \{ \sigma_1, \sigma_2, \cdots , \sigma_m \} となりますが  \sigma_i \ (1 \le i \le m) はすべて自己同型写像なので  \operatorname{Gal}(L/M) = G^M が成り立ちます。[証明終わり]