エレファント・コンピューティング調査報告

極限に関する順序を論理プログラミングの手法を使って指定することを目指すブロクです。

群論の計算(33)

体と自己同型写像(7)

またしばらくは本に沿って進めていきますが、その前に少し定義を書き直しておきます。

定義 ガロア

 K \mathbb{Q} を含む体とします。 f \in K[X] の最小分解体  L K 上の自己同型群を  fガロア群と呼び  \operatorname{Gal}(L/K) と表します。

定義 ガロア拡大

 L を体  K の有限拡大(拡大の次数が有限である拡大)とし、 \mathbb{C} に含まれるものとします。 L から  \mathbb{C} への  K の元を不変にする単射の準同型がすべて自己同型写像になるとき、 L Kガロア拡大体であると言います。また  L/Kガロア拡大であると言います。このときの自己同型群は  L K 上のガロア群となります。

上記の定義では、定義 5.8 に条件を追加して有限拡大に限るようにしました。ガロア拡大は有限拡大でなくても定義できるのですが、ここでは有限拡大しか扱わないので大丈夫です。

定理 5.28 の証明から  f \in K[X] の最小分解体  L Kガロア拡大体となります。以下で定理 5.28 の証明を見ていきますが、その前に、定理 5.3、定理 5.8、定理 5.9、定理 5.10、は  \mathbb{Q} を含む体で成り立つので書き直しておきます。

定理 5.3

 K L は体で  \mathbb{Q} \subseteq K \subseteq L とします。 \alpha \in L K 上の最小多項式 n 次式  f であるとすると
 K(\alpha) = \{ a_{n-1}\alpha^{n-1} + \cdots + a_{1}\alpha + a_0  \ | \ a_i \in K \ ( 0 \le i \le n-1 ) \}
は体になり、元の表し方は1通りとなります。

定理 3.6 (5)

 K \mathbb{Q} を含む体とします。 p \in K[X] を既約多項式とすると  p は重根を持ちません。

定理 5.8

 K \mathbb{Q} を含む体とします。体  L L' K を含み  \mathbb{C} に含まれる体とします。 \sigma を体  L から体  L' への  K を不変にする同型写像とします。 f \in K[X] K 上の  n 次既約多項式とします。 f の根のすべてを  \alpha_1, \alpha_2, \cdots , \alpha_n \in L とすると  \sigma(\alpha_1), \sigma(\alpha_2), \cdots , \sigma(\alpha_n)  \alpha_1, \alpha_2, \cdots , \alpha_n を入れ替えたものとなります。

定理 5.9

 K L は体で  \mathbb{Q} \subseteq K \subseteq L とします。 f \in K[X] K 上の  n 次既約多項式 \alpha, \beta \in L f の異なる根であるとすると  \sigma(\alpha) = \beta を満たす  K(\alpha) から  K(\beta) への  K を不変にする同型写像  \sigma が存在します。

定理 5.10

 K \mathbb{Q} を含み  \mathbb{C} に含まれる体とします。 f \in K[X] K 上の  n 次既約多項式 f の根のすべてを  \alpha_1 = \alpha, \alpha_2, \cdots , \alpha_n \in \mathbb{C} とします。このとき  K(\alpha) から  \mathbb{C} への  K を不変にする単射の準同型は  n 個あり、それらは  \sigma_i(\alpha) = \alpha_i \ (i = 1, 2, \cdots , n) で定められ、 \sigma_i K(\alpha) から  K(\alpha_i) への同型写像となります。

以下で定理 5.28 の証明を再び書いておきますが、その前に定理 5.26、定理 5.27 を引用しておきます。

定理 5.26

 \alpha_1, \alpha_2, \cdots , \alpha_n をそれぞれ  \mathbb{Q} 含む体  K 上の方程式の解とします。このとき  K(\alpha_1, \alpha_2, \cdots , \alpha_n) = K(\theta) を満たす  \theta が存在します。このような  \theta を原始元と言います。

定理 5.27

 \mathbb{Q} を含む体  K 上のある多項式の最小分解体  L は、ある  \theta \in L を用いて  L = K(\theta) と表せます。

定理 5.28

 K \mathbb{Q} を含む体とします。 K 上のある多項式の最小分解体を  Lガロア群を  G とするとき  [ L : K ] = | G | が成り立ちます。

[証明] 定理 5.27 より  L = K(\theta) となる  \theta \in L が存在します。 \theta K 上の最小多項式 g、その次数を  m とします。定理 5.2 より  g は既約多項式となります。定理 3.6 (5) より  g m 個の異なる根  \theta_1 = \theta, \theta_2, \cdots , \theta_m を持ちます。定理 5.10 より  L に作用する同型写像 \sigma_i(\theta) = \theta_i \ (i = 1, 2, \cdots , m) を満たすもので  m 個となります。

 L K 上の多項式  f の最小分解体とします。 f の根を  \alpha_1, \alpha_2, \cdots , \alpha_n とすると  L = K(\alpha_1, \alpha_2, \cdots , \alpha_n) となります。 \theta \alpha_1, \alpha_2, \cdots , \alpha_n多項式 \theta = h(\alpha_1, \alpha_2, \cdots , \alpha_n) と書くことができます。定理 5.6 と同様に  \sigma_i(\theta) = \sigma_i(h(\alpha_1, \alpha_2, \cdots , \alpha_n)) = h(\sigma_i(\alpha_1,) \sigma_i(\alpha_2), \cdots , \sigma_i(\alpha_n)) となります。定理 5.8 より  \sigma_i(\alpha_1,) \sigma_i(\alpha_2), \cdots , \sigma_i(\alpha_n) \alpha_1, \alpha_2, \cdots , \alpha_n を入れ替えたものなので、 \sigma_i(\theta) = \theta_i \ (i = 1, 2, \cdots , m) は最小分解体  L に含まれます。定理 5.17 より  \sigma_i \ (i = 1, 2, \cdots , m) はすべて  L の自己同型写像となります。 G = \operatorname{Gal}(L/K) = \{ \sigma_1, \sigma_2, \cdots , \sigma_m \} となり  |G| = m となります。

一方  \theta K 上の最小多項式  g の次数が  m なので定理 5.3 より  [ L : K ] = m となります。

よって  [ L : K ] = |G| となります。[証明終わり]

定理 5.28 の証明の前半から  f \in K[X] の最小分解体  L Kガロア拡大体となります。

逆に、体  L を体  K の有限拡大で、 \mathbb{C} に含まれるものとし、 L から  \mathbb{C} への  K の元を不変にする単射の準同型がすべて自己同型写像になるとします。 K の有限拡大は代数拡大となり、定理 5.26 の条件を満たすので定理 5.26 より  L = K(\alpha) を満たす  \alpha \in L が存在します。

 \alpha K 上の最小多項式  f \in K[X] の根のすべてを  \alpha_1 = \alpha, \alpha_2, \cdots , \alpha_n \in \mathbb{C} とします。定理 5.9 より  \sigma(\alpha) = \alpha_i を満たす  K(\alpha) から  K(\alpha_i) への  K を不変にする同型写像  \sigma が存在します( i = 1, 2, \cdots , n)。仮定より  \sigma L の自己同型写像になるので  \alpha_i \in L となります。よって  L = K(\alpha_1, \alpha_2, \cdots , \alpha_n) となって L f の最小分解体となります。