エレファント・ビジュアライザー調査記録

ビジュアルプログラミングで数式の変形を表すことを考えていくブロクです。

平方剰余の相互法則(2)

【剰余類】

整数全体の集合を  \mathbb{Z} と書きます。整数  n,  x に対して  x + n\mathbb{Z} = \{ x + nk | k∈\mathbb{Z} \} n を法とする剰余類といいます。整数  x,  y が同じ剰余類  (x + n\mathbb{Z}) に属することを  x n を法として  y に合同( x,  y n を法として合同)であるといい  x≡y \ (\mathrm{mod} \ n) と書きます。

剰余類に

  •  (x + n\mathbb{Z}) + (y + n\mathbb{Z}) = (x + y) + n\mathbb{Z}
  •  -(x + n\mathbb{Z}) = (-x) + n\mathbb{Z}
  •  (x + n\mathbb{Z})(y + n\mathbb{Z}) = xy + n\mathbb{Z}

とすることで足し算、引き算、掛け算を定義することができます。剰余類全体の集合は環になります。これを  n を法とする剰余環といい  \mathbb{Z}/n\mathbb{Z} と書きます。

【群の定義】

集合  G に演算  x + y が定義されていて、次の条件が成り立っているとき、 G は群であるといいます。

  1. すべての  G の元  x,  y,  z に対して  ( x + y ) + z = x + ( y + z ) (結合法則)
  2. ある  G の元  0 が存在して、すべての  R の元  x に対し  0 + x = x + 0 = x が成り立つ。 0 G単位元という。
  3. すべての  G の元  x に対して、 y + x = x + y = 0 をみたす  G の元  y が存在する。 y x の逆元といい、 -x と書く。

 G のすべての元  x y に対して  x + y = y + x (交換法則)が成り立つとき、 G は可換群またはアーベル群といいます。

【環の定義】

集合  R に2つの演算、加法  x + y、乗法  xy が定義されていて、次の条件が成り立っているとき、 R は環であるといいます。

  1.  R は加法に関して可換群である。すなわち
    • (i) すべての  R の元  x,  y,  z に対して  ( x + y ) + z = x + ( y + z ) (結合法則)
    • (ii) すべての  R の元  x,  y に対して  x + y = y + x (交換法則)
    • (iii) ある  R の元  0 が存在して、すべての  R の元  x に対し  0 + x = x + 0 = x が成り立つ。 0 R の零元(zero element)という。
    • (iv) すべての  R の元  x に対して、加法の逆元が存在する。すなわち  y + x = x + y = 0 をみたす  R の元  y が存在する。この  y -x と書く。
  2.  R は乗法に関して結合法則が成り立つ。すなわちすべての  R の元  x,  y,  z に対して  (xy)z = x(yz)
  3.  R は乗法に関して交換法則が成り立つ。すなわちすべての  R の元  x,  y に対して  xy = yx
  4.  R は乗法の単位元(単に  R単位元という) 1 をもつ。すなわち  R の元  1 が存在してすべての  R の元  x に対して  1x = x1 = x
  5. 分配法則が成り立つ。すなわちすべての  R の元  x,  y,  z に対して  x(y + z) = xy + xz、 (x + y)z = xz + yz

 x + (- y) を x - y と書きます。

【体の定義】

 0 以外の元がすべて乗法の逆元を持つ環を、体といいます。 すなわち  F が環で、任意の  F の元  x に対して  xy = yx = 1 を満たす  F の元  y が存在するとき、 F は体であるといいます。

 p素数のときに  \mathbb{Z}/p\mathbb{Z} は体になります。
[証明]
 p素数なので、整数  x に対して、 mx + np = 1 を満たす整数  m,  n が存在します。 mx≡1 \ (\mathrm{mod} \ p) となるので  m + \mathbb{Z} x + \mathbb{Z} の乗法の逆元となります。
[証明終わり]

 \mathbb{Z}/p\mathbb{Z} F_p と書きます。

群(演算は掛け算で書きます)  G の元  x が存在して  G = \{1, x^{±1}, x^{±2}, … \} となるとき ( x^n n 個の  x の積、 x^{-1} x の逆元、 x^{-n} n 個の  x の逆元の積です)、 G巡回群といいます。 x G の生成元といいます。

 G の元  x に対して  \{1, x^{±1}, x^{±2}, … \} \langle x \rangle と書きます。 \langle x \rangle の元の個数が有限のとき、 \langle x \rangle の元の個数を  x の位数といいます。

 G の部分集合  H が、 G の演算によって群になるとき、  H G の部分群であるといいます。 x G の元とすると  \langle x \rangle G の部分群となります。

 G を群、 H G の部分群とします。  G の元  x に対して  xH xy ( y H の元)という元の全体の集合とします。 xH を 左剰余類といいます。異なる左剰余類の共通部分は空となります。 H の元の個数が有限のとき、 xH の元の個数は  H の元の個数に等しくなります。さらに  G の元の個数が有限のとき、 G は共通部分のない左剰余類の和集合になるので、 G の元の個数は  H の元の個数の倍数になります。

 x,  y を可換群  G の元とします。 x の位数が  m y の位数が  n m n が互いに素( 1,  -1以外の共通の約数を持たない)であるとき、 xy の位数は  mn となります。
[証明]
 (xy)^k = 1 とします。 1 = (xy)^{km} = (x^{km})(y^{km}) = y^{km} より  km n の倍数となります。 m n が互いに素なので  k n の倍数となります。 1 = (xy)^{kn} = (x^{kn})(y^{kn}) = x^{kn} より  kn m の倍数となります。 m n が互いに素なので  k m の倍数となります。よって  k mn の倍数となります。逆に  k mn 倍数とすると  (xy)^k = (x^k)(y^k) = 1 となるので、 xy の位数は  mn となります。
[証明終わり]

 F を体、 f(X) F の元を係数とする  n 次以下の多項式( F の元と  X から足し算、引き算、掛け算を繰り返してできた式。 n 次以下とは  f(X) = a[0] + a[1]・X + a[2]・X^2 + … + a[n]・X^n ( a[0],  a[1],  a[2], ….  a[n] F の元)と書くことができるということをいいます)とすると、 f(a) = 0 を満たす  F の元  a の個数は  n 以下となります( f(a) f(X) X a で置き換えたもので、 F の元となります)。
[証明]
 n に関する帰納法によって証明します。 f(a) = 0 とすると、 f(X) (X - a) で割ると余りは  0 となります。よって  f(X) = (X - a)g(X) を満たす  n-1 次以下の多項式  g(X) が存在します。帰納法の仮定により  g(b) = 0 を満たす  b n-1 個以下なので  f(a) = 0 を満たす a は  n 個以下となります。
[証明終わり]

 F が有限体のとき  F^* = F - \{0\} は乗法に関して巡回群になります。
[証明]
 x F^* の位数が最大の元とし、 x の位数を  m とします。 \langle x \rangle ≠ G とすると  G - \langle x \rangle の元  y が存在します。 y の位数を  n とし、 k m n の最大公約数とします。 z = y^{(n/k)} とおくと  z^m = y^{(mn/k)} = (y^n)^{(m/k)} = 1 となります。 \langle x \rangle = \{x^e | e = 0, 1, 2, … , m-1\} の元  x^e (x^e)^m = (x^m)^e = 1 を満たすので、 a^m = 1 を満たす  F^* の元(最大  m 個)  a \langle x \rangle の元となります。よって  z \langle x \rangle の元となります。 n/k = 1 ならば  y = z ∈ \langle x \rangle となるので  n/k > 1 となります。 w = x^k・y とおくと、 w の位数 = x^k の位数 × y の位数 = (m/k)・n = mn/k > m となります。 x の位数が最大であることに反するので  \langle x \rangle = G となり、 G巡回群となります。
[証明終わり]

 F_p^*巡回群になります。

フェルマーの小定理

 p 2ではない素数 a p と素な整数のとき、 a p-1 乗は  p を法として  1 と合同になります。
[証明]
 x F_p^* の生成元とすると、 x^{p-1} = 1 となります。 a を含む剰余類はある  x^e に等しいので  a^{p-1} + p\mathbb{Z} = (x^e)^{p-1} = (x^{p-1})^e = 1 となります。
[証明終わり]

オイラーの規準】

 p 2ではない素数 a p と素な整数のとき、 a が法  p に関する平方剰余のとき、 a (p-1)/2 乗を  p で割ったときの余りは  1 a が法  p に関する平方剰余ではないとき、 a (p-1)/2 乗を  p で割ったときの余りは  p-1 になります。
[証明]
 a^{p-1}≡1 \ (\mathrm{mod} \ p) となるので  a^{ (p-1)/2}≡±1 \ (\mathrm{mod} \ p) となります。 a≡x^2 \ (\mathrm{mod} \ p) とすると  a^{ (p-1)/2}≡x^{p-1}≡1 \ (\mathrm{mod} \ p) となります。逆に  a^{ (p-1)/2}≡1 \ (\mathrm{mod} \ p) とします。 r F_p^* の生成元として、 a + p\mathbb{Z} = r^e とします。 (r^e)^{ (p-1)/2} = 1 より  e(p-1)/2 p-1 の倍数となり、 e 2 の倍数となるので、 a は法  p に関する平方剰余となります。
[証明終わり]